■厚労省が論点示す
厚生労働省は1日、特定集中治療室(ICU)に専任の薬剤師を配置した結果、薬剤関連のインシデント減少等の効果があったことから、病棟業務の実施が努力義務とされていたICU等の入院患者も「病棟薬剤業務実施加算」の算定対象に含めるなど診療報酬で評価する論点を、中央社会保険医療協議会の「入院医療等の調査・評価分科会」に示した。2015年度の入院医療等の実態調査で、約半数のICUに専任の薬剤師が配置され、1週間当たり27.6時間の業務を実施して効果が得られていることが明らかになったためで、ICUに関与する薬剤師業務が診療報酬で評価される可能性が出てきた。
病棟実施加算は、特定集中治療室管理料をはじめとする特定入院料に含まれるとされ、ICU等の入院患者は算定対象とならない。ただ、病棟薬剤業務の実施は努力義務とされていた。
この日の分科会で示された入院医療等の実態調査では、特定集中治療室管理料の施設基準上は求められていないものの、48%と約半数のICUに専任の薬剤師が配置されていることが判明。ICU等では、医薬品安全性情報等の把握および周知、医薬品の投薬・注射状況の把握、流量・投与量の計算等、薬剤投与前の相互作用の確認、新規・変更処方の提案等、多彩な薬剤師業務が行われていることが明らかになった。
ICU等のハイリスクな場所に薬剤師を配置したことによる効果を見ると、「医師・看護師の業務負担が減少した」が51.2%、「副作用の回避、軽減や病状の安定化に寄与した」が25.2%、「薬剤関連のインシデントが減少した」が15.0%などの結果だった。また、日本集中治療医学会の指針では、「集中治療部における薬剤管理・薬剤調整などに関与する薬剤師が集中治療部内に勤務することが望ましい」としているほか、海外のガイドラインでもICUへの薬剤師配置を推奨している。
こうした調査結果等から、病棟実施加算の算定対象外であり、病棟業務の実施が努力義務であるにもかかわらず、ICUの約半数で専任の薬剤師が配置され、多彩な業務に関与していたことが裏付けられた。
さらに、ICUへの薬剤師配置により、医師・看護師の業務負担軽減等の効果も得られたことを踏まえ、厚労省はICU等の入院患者に病棟薬剤業務を行った場合も、病棟実施加算の算定対象に含めるなど診療報酬で評価する論点を提示。委員からも評価に同調する意見が相次いだ。