不明だった二者の体動が無意識に同期するメカニズム
自然科学研究機構生理学研究所(NIPS)は9月25日、無意識の体の動きの同期に必要かつ基本的なメカニズムとして、二者間の視覚による体動制御が対等になる必要があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所の定藤教授と岡崎研究員らのグループによるもの。研究結果は、「PLOS ONE誌」オンライン版に9月23日付けで掲載されている。
画像はリリースより
これまでにも、会話中の体動が同期するなど、コミュニケーションをとっている二者間において、体動などの動きが同期するといった現象がいくつか報告されてきた。しかし、コミュニケーション中の二者の体動が、なぜ無意識であるにも関わらず同期するのか、そのメカニズムはよく判っていなかったという。
二者間の視覚による体動制御が対等になることで実現
研究グループは、44名の女性被験者22ペアにお互いに向かい合った状態で直立してもらい、二者の体動の時系列信号に対しての相互相関分析および因果解析を行った。
その結果、静止立位時に生じる小さな体動に注目し、会話などの手段が無くても二者がただ見つめ合うだけで、小さな体動が二者の間で時間遅れなく同期することを発見。さらに、二人の体動を多変量自己回帰モデルでモデル化し、二者間の因果解析とモデルによるシミュレーションを行った結果、静止立位時の体動の同期には「二者間の視覚的による体動制御が対等になる必要がある」ことがわかったという。
通常、相手の体の動きを見て自分の体動の制御をする際は、二人のうちの一方のみが意識的に体動の調節を行っても、同期に時間的な遅れが生じる。しかし、ヒトは日常生活の中でコミュニケーションの最中に無意識的に体動を同調させている。これは、コミュニケーションを行う二者の視覚情報であり、お互いがコミュニケーションをとる間にやり取りする視覚による体動制御が対等になることで、はじめて時間的な遅れの無い同期が可能となるという。
この研究から、これまで明らかになっていなかった社会的相互作用の基礎的なメカニズムの一つが明らかになった。今後、教育現場やビジネスの場において、コミュニケーションする二者のコミュニケーション状態を定量化したり、会話や体の動きの同期といった社会的相互作用に問題を抱える自閉症などの診断支援などへの実用化が期待されるとしている。
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