ctDNAが陽性であった症例、がんが微小な血管に浸潤
広島大学は10月1日、肝がんで肝切除術を受けた症例のctDNAの解析を行い、手術前のctDNAが陽性であった症例では、がんが微小な血管に浸潤しており、術後早期の再発や遠隔転移が高率に起こることを明らかにしたと発表した。またctDNAの量はがんの進展や治療効果に伴って増減することも明らかになったという。
画像はリリースより
この研究成果は、同大学病院消化器診療科・大野敦司医科診療医と同大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門・茶山一彰教授ら研究グループによるもの。オンライン科学雑誌「Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology」2015年9月号に掲載されている。
全世界での原発性肝がんの年間患者発生数は約78万人で全がん種中第5位、死亡患者総数は約75万人で全がん種中第2位であり、大きな保健上の問題となっている。肝がんは、他の多くの固形がんと異なり、腫瘍の病理診断を行わず、画像診断のみで診断する事が多いのが特徴。その理由の1つに、がんの組織を得るための肝生検により、腹腔内に播種してしまう危険性があることが挙げられる。
近年、非侵襲的なコンパニオン診断のバイオマーカーとしてctDNAが注目されており、肺がん、乳がん、大腸がん、卵巣がんなどのさまざまな固形がんにおいてその有用性が示されている。しかし、肝がんにおけるctDNAの有用性はこれまで明らかになっていなかった。
ctDNA量が治療方法を選択する上で有用な情報となる可能性生
今回研究グループは、手術によって肝がんを切除した症例の、がん組織の全ゲノム解析の結果から、がんに特異的なプライマーを設計。手術前の血清からDNAを抽出し、そのプライマーを用いて、PCRを行い、電気泳動を行ったところ、46例中7例で、PCRで増幅されたバンドを確認したという。
バンドを認めた症例をctDNA陽性例、認めなかった症例をctDNA陰性例と定義したところ、ctDNA陽性例では、術後の再発、遠隔転移が有意に高率に起こること、また、術後の病理結果と比較したところ、ctDNAは顕微鏡的門脈侵襲の予測因子として有用であることが明らかになり、ctDNAをリアルタイムPCRで定量したところ、ctDNA量は肝がんの病勢を反映し推移する事もわかったという。
今回の研究成果によって、治療前のctDNAの量は、治療方法を選択する上で有用な情報となる可能性が示唆された。また、血中cell-free DNAの次世代シークエンサーでの解析は、非侵襲的に繰り返しがんの遺伝子変異情報を得ることができるため、現在開発が進行中の多くの分子標的薬を選択する上での有用なバイオマーカーとなる事が期待される。
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・広島大学 プレスリリース