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次世代型抗体開発技術キャスマブ法を応用し、がん転移に対する新規治療法を開発-東北大

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2015年09月30日 PM03:30

がん転移を促進するポドプラニンを標的に

東北大学は9月28日、がん細胞に高発現する糖タンパク質のポドプラニンに対して、がん転移抑制抗体を作製することに成功したと発表した。これは、同大大学院医学系研究科の加藤幸成教授、金子美華准教授の研究グループが、東京大学大学院医学系研究科の深山正久教授、国田朱子助教の研究グループ、 徳島大学大学院医歯薬学研究部の西岡安彦教授、阿部真治助教の研究グループと共同で行った研究成果である。


画像はリリースより

がん転移促進因子のポドプラニンは、悪性脳腫瘍、、食道がん、卵巣がんなどの複数の難治性がんに高発現し、がん細胞の浸潤や転移を引き起こすことが知られているため、抗体医薬の格好の標的となる。これまでは、ポドプラニンの発現する原発巣に対する治療効果のみを調べる研究や、ポドプラニンの転移促進活性を中和することだけを目的に抗体医薬開発が行われていた。また、一旦転移巣が形成されると、もはやがんの制御は難しいと考えられていた。

今回の研究においては、抗腫瘍活性の高い抗体を樹立することにより、転移巣ができてからも十分にがん転移の治療が間に合うのではないかと考え、様々な治療実験を実施したという。

効率良くがん転移を抑制する抗体を作製

加藤教授らは2014年、がん細胞と正常細胞に同じ糖タンパク質が発現している場合、タンパク質に付加された糖鎖の種類の違いや糖鎖の付加位置の違いに着目し、その差を見分ける抗体を戦略的に樹立する方法を立ち上げ、キャスマブ法と命名。加藤教授らは、次世代型抗体開発技術であるキャスマブ法により、がん細胞特異的な抗体(キャスマブ)を作製できるだけでなく、幅広くがんの診断や治療に役立つ抗体を作製できることを実証してきたという。

今回の研究において開発した新規抗体(キメラ型 LpMab-7;chLpMab-7)は、がん細胞が転移巣を形成した後においても治療効果をもたらすことが判明。ポドプラニンを標的とした抗腫瘍活性の高い抗体医薬により、中和活性に頼らず、がん転移の治療が可能であることを証明したとしている。なお同研究結果は、9月25日に米国科学誌「Oncotarget」に掲載された。

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東北大学 プレスリリース

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