
岩田氏は、認知症診療で薬局薬剤師に期待することとして、▽認知症の人の拾い上げ▽認知症患者の内服薬の確認▽診断後の日常生活の支援――を求めた。特に、初期の認知症を薬局で見つけるため、頻繁に来局する高齢者と雑談をしてニュース、日付、曜日を質問したり、同じ処方箋を持って頻繁に来院していないか確認することをポイントに挙げた。
初期の認知症は、当たり障りのない会話では分からず、疑わないといけないと指摘。具体的には、薬局で世間話をし、最近のニュースの話題を尋ね、要領を得ない回答だった場合、認知症を疑ってみることが必要とアドバイスした。
認知症患者の内服薬については、抗コリン薬、抗うつ薬、抗不安薬や睡眠導入薬で作用時間の長いもの、抗コリン作用の強いものが、高齢者の認知機能を低下させる原因になり得ると指摘。岩田氏は「こうした薬が高齢者に処方されているかどうか注意して見てほしい」と求めた。抗認知症薬についても「薬がなくなっているか減り方を見てもらい、チェックすることが大切」と求めた。
認知症患者の住まいに関しては、自宅に住む人が増える推計を示し、「患者の世話をする人が家族でなくなっており、ビジネスとして行うようになってきている」と地域の崩壊を指摘。困ったときに頼れる人がおらず、会話もないなど、独居高齢者が孤立化している問題点を挙げ、「あの薬局に行ったら相手にしてくれるというように、寂しい高齢者の話し相手となる役割も非常に大事」と強調した。
さらに、「認知症の患者は相手によって態度を変える。親しみやすい薬剤師かどうか、相対的に認知症患者がどう見るかを考えることも大切」とアドバイス。「認知症を見分けるのは難しいことではなく、薬局でおかしいと感じた直感はかなり正しい」として、積極的なアクションを促した。
■薬局でも早期発見の取組み‐大阪薬大・恩田氏ら
一方、恩田光子氏(大阪薬科大学臨床実践薬学准教授)は、薬局での認知症早期発見プロジェクトを開始したことを報告した。薬局を起点に認知症を早期発見し、地域包括支援センターへの連絡、介入、早期診断、早期治療へと連携する仕組みを作り、その有用性を検証するのが狙い。地域包括支援センターと薬局の連携を軸に、行政や地区医師会、薬剤師会など関係者間の相互理解を深めると共に、役割分担を明確化することを目指している。
6月から高槻市内の2薬局でプロジェクトを開始。薬局で対応が必要と判断した人や実施期間中に相談を受けた人を対象に、2018年5月までの3年間にわたりパイロットを行う。薬局内に包括同意用ポスターを貼り、協力薬局が認知症の早期発見に取り組んでいることを周知。観察項目と会話のチェックシートを活用し、プロジェクトフローに沿って実施する。
月に1回程度、認知症地域支援推進員とプロジェクトコーディネータを務める恩田氏が進捗を確認し、情報整理を行う。現在、12人が経過観察中で、恩田氏は「踏み込んだ関与の必要性やタイミング、本人や家族へのアプローチ、地域包括支援センターにつなぐタイミングなど、薬剤師だけで意思決定するのが難しいケースがある」と課題を挙げた。