心房細動による脳卒中予防から適応を拡大
バイエル薬品株式会社は9月24日、経口抗凝固剤(選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤)「イグザレルト(R)錠」(一般名:リバーロキサバン)について、厚生労働省より、深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)と肺血栓塞栓症(PE:pulmonary thromboembolism)の治療および再発抑制に対する適応追加承認を取得したと発表した。
PEとDVTは、世界的に重要な死亡原因のひとつ。欧州では年間50万人以上、また、米国では年間約30万人が、これら疾患の総称である静脈血栓塞栓症(VTE:venous thromboembolism)により亡くなっていると報告されている。DVTを含めたVTEの全国規模での正確な患者数が把握できていないこともあり、日本ではこれまで、欧米諸国と比較してPEはまれな疾患と考えられていたが、近年、日本国内における報告数は増加傾向にあるといわれている。
「シングル・ドラッグ・アプローチ」でQOL向上に貢献
今回の適応追加は、海外で行われたEINSTEIN PE、EINSTEIN DVTなどの第3相臨床試験プログラムや、日本のPE患者とDVT患者のそれぞれを対象とした2つの第3相臨床試験J-EINSTEIN PE、J-EINSTEIN DVTで得られたデータに基づき承認されたという。
これらの臨床試験においてイグザレルトは、有効性に関しては、日本人において血栓退縮効果があること、安全性に関しては、従来療法と比べ、重大な出血事象または重大ではないが臨床的に問題となる出血事象の発現頻度は同程度であり、重大な出血事象を46%有意に減少させることが確認された。
なお、これらの臨床試験では、初期治療(15mg 1日2回を3週間投与)の期間において従来療法と比較して出血事象が増加する傾向は認められなかったが、医薬品医療機器総合機構と協議のうえ、患者の安全性を確保するため、添付文書の警告欄に初期治療期に関して症例ごとの慎重な投与判断を処方医に求める旨の注意喚起を追記することにしたという。
また、PE・DVTの治療および再発抑制を目的とする従来の抗凝固療法は、初期治療として主に未分画ヘパリンなどの注射剤投与を行ったうえで、ワルファリンの継続投与を行う2種類の薬剤を用いる方法だが、イグザレルトではその2剤に代わり治療1日目から経口投与可能な「シングル・ドラッグ・アプローチ」の有用性が示されている。さらに、入院期間を有意に短縮することも示されており、患者のQOL向上にも貢献できると期待を寄せている。
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・バイエル薬品株式会社 ニュースリリース