糖脂質の蓄積で発生するαシヌクレイン蛋白質の異常構造化
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は9月16日、パーキンソン病およびレビー小体型認知症の発症に関与するαシヌクレイン蛋白質の異常構造化が糖脂質の蓄積によって引き起こされることを明らかにしたと発表した。
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この研究は、同センター神経研究所疾病研究第四部の永井義隆室長、鈴木マリ研究員らの研究グループによるもの。理化学研究所の平林義雄チームリーダーらとの共同研究として、主に精神・神経研究開発費の支援のもとで行われた。研究成果は英科学雑誌「Human Molecular Genetics」オンライン速報版に9月11日付で先行公開されている。
パーキンソン病患者の神経細胞内ではαシヌクレイン蛋白質が異常構造変化を起こして、レビー小体と呼ばれる封入体に蓄積することが知られているが、その原因は未だ十分に解明されていなかった。しかし、近年の遺伝疫学研究により、糖脂質分解酵素の1つであるグルコセレブロシダーゼ(GBA)遺伝子に変異を持つ場合に、パーキンソン病を約5~8倍発症しやすくなることが分かっている。一方、レビー小体型認知症でも、αシヌクレイン蛋白質がレビー小体に蓄積することが知られているが、この発症にもGBA遺伝子変異が関わることが報告されていた。
パーキンソン病・レビー小体型認知症の全容解明に期待
研究グループは、GBA遺伝子を抑制したパーキンソン病モデルショウジョウバエを作製。GBAの働きが低下すると運動症状や神経変性が悪化することを明らかにした。さらに、GBAの機能低下により糖脂質グルコシルセラミドが蓄積し、グルコシルセラミドが直接作用してαシヌクレイン蛋白質のプリオン様異常構造化を引き起こすことを、生化学的手法により証明した。
この研究成果は、パーキンソン病およびレビー小体型認知症の新たな発症メカニズムを明らかにしたものであり、この過程を抑えることによる新たな治療・予防法の開発に貢献することが期待されている。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース