生物学、ヒト遺伝子学を開発に活かす
世界有数のバイオテクノロジー企業・アムジェンは創業35周年を迎え、現在開発が進んでいるパイプラインの最新イノベーションについてメディアセミナーを開催した。セミナーでは米アムジェンのトランスレーショナルサイエンス シニアヴァイスプレジデントのデイビット・リース氏が「次のイノベーティブな薬剤の準備が整ってきている」と語る、同社のパイプラインについて紹介。主力開発品である脂質異常症、骨粗しょう症、がん領域における3つの開発品について、最新の研究開発状況を報告した。
米アムジェン トランスレーショナルサイエンス
シニアヴァイスプレジデント デイビット・リース氏
PCSK9阻害剤「Evolocumab」は国内では3月に申請済み
心血管領域は、ヒト遺伝子情報をもとに薬剤標的を特定・実証するアムジェンの成長分野のひとつだ。「Evolocumab」は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害するヒトモノクローナル抗体。PCSK9の減少により、より多くのLDL-Cを血中から取り除くことができる。米国では2014年8月に、EUでは同年9月に申請しており、EUでは2015年7月に薬事承認を得ている。また、日本国内でも2015年3月に申請を行った。
遺伝性スクレロスチン欠乏症のヒトは骨量が高いという遺伝学的洞察から開発された「Romosozumab」。これは、スクレロスチンの作用を阻害するヒト化モノクロール抗体だ。骨形成を増加させ、骨破壊(吸収)を減少させる、骨粗しょう症の治療薬として研究が進められている。日本においては、第2相、第3相プログラムを実施中で、既に終了した第2相用量設定試験の結果は10月の米国骨代謝学会で発表される予定だ。
抗CD19 BiTE抗体「Blinatumomab」は、CD19とCD3に二重特異性を有するT細胞誘導抗体製剤。まれに急速に進行する血液や骨髄のがんである、フィラデルフィア染色体陰性の再発または難治性のB前駆細胞性ALL患者の治療としてFDAにより承認された初めての単剤免疫療法だ。日本国内では現在、治験の準備中。
「アムジェンではアンメット・メディカル・ニーズが大きい領域のパイプライン開発を進め、革新的な医薬品を日本の患者に届けていく」とリース氏。アムジェンの日本法人、アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社は、アムジェンとアステラス製薬の合弁会社。出資比率はアムジェン51%に対し、アステラス製薬が49%で、共同開発・共同商業化を行う。同社は2020年にアムジェンの完全子会社として独立する予定だ。