ピオニエは、大商が出資して今年8月、大阪市内に設立。その上で第三者割当増資によって、大阪府や製薬会社、金融機関などが出資して創設した「大阪バイオファンド」から1億2500万円、日本ベンチャーキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルからそれぞれ6250万円の資金を得た。スタッフ数は取締役を含めて3人。代表取締役には藤沢薬品で化学合成を経験した伊藤義邦氏が就いた。
ピオニエに塩野義製薬が無償で導出したシーズは、強い鎮痛作用を維持したまま便秘などの副作用を回避した、次世代オピオイド系鎮痛薬を目指して開発を進めているもの。
ピオニエは今後、獲得した資金をもとに塩野義製薬との共同研究やCROの活用によって、2年以内にリード化合物を創出することを目指す。ドラッグデザインをピオニエと塩野義製薬が共同で行い、デザインした化合物の合成を塩野義製薬とCROが共同で行う。資金の大部分を化合物合成に費やす。塩野義製薬が単独で開発する場合に比べ、スピードアップを図れる。
目標通りのリード化合物を創製できた場合、基本的に塩野義製薬が買い取る。このほか他社によるM&A、株式市場への上場、ライセンスアウトなどの選択肢もある。2年後をメドに方向性を判断するという。
今回構築したスキームによって、効果や副作用が十分に検証されないまま、埋没してしまいかねないシーズの研究開発に、外部資金を積極的に活用できるようになった。
ベンチャーキャピタルの資金を、製薬会社の研究開発振興に直接結びつけることが可能になった。
14日に大阪市内で開いた記者会見で相良暁氏(大商ライフサイエンス振興委員会委員長、小野薬品社長)は「製薬会社は今、シーズの研究開発に投資したくても、活用できる研究開発費の制約などによって、投資が遅れるケースがある。そんな時に外部のリソースを活用し研究開発を前に進めることができれば、大きなサポートになる」と強調。大商が仲介するこのスキームは「製薬会社から見ると信頼できる」と語った。
今後、大商はこのほかにも製薬会社の相談に応じて、このスキームを活用したベンチャー企業の立ち上げを進める計画。それによって大阪の創薬環境を活性化したい考えだ。