新たな卵巣がん治療に繋がる世界初の医師主導治験
京都大学は9月11日、同大学大学院医学研究科婦人科学産科学分野の濵西潤三助教、小西郁生教授を中心とする研究グループが、抗がん剤(プラチナ製剤)抵抗性となった再発・進行卵巣がん患者に、同経路を遮断する抗PD-1抗体「ニボルマブ」を投与する医師主導治験を行い、20人中2人で腫瘍の完全消失、1人に縮小が認められたことを発表した。同研究成果は、9月8日付けで米科学雑誌「Journal of Clinical Oncology」に公開されている。
画像はリリースより
近年の基礎免疫学の発展とともに、がん細胞がさまざまな方法で免疫細胞からの攻撃を逃れる、いわゆる「がん免疫逃避機構」の存在が明らかとなり、さらにこの機構の中心的役割を果たしているPD-1(Programmed Cell Death-1)/PD-L1経路が大きな注目を浴びている。
研究グループは、卵巣がんに対して抗PD-1抗体であるニボルマブを用いてPD-1/PD-L1経路を標的とする新しい治療戦略は有望であると考え、京都大学臨床研究総合センターとの共同研究にて、2011年から2014年12月までニボルマブを用いた医師主導治験を実施したという。
PD-1/PD-L1経路を遮断することで免疫が再活性化し、腫瘍が消失・縮小
同治験の対象は、卵巣がんに最も有効なプラチナ製剤に抵抗性と判断された再発・進行上皮性卵巣がん(卵管がん、腹膜がんを含む)患者。完全にヒト型に組み換えた抗PD-1抗体(ニボルマブ)を2週間毎に点滴静注し、4回を1コースとして、病状の悪化(PD)もしくは最大6コース(1年間)で投与を終了することとした。
主要エンドポイントは奏効(最良総合評価)、副次エンドポイントは有害事象および副作用、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、疾患制御率(DCR)。また当時、他のがん種での先行した臨床試験・治験から安全性、有効性に対する用量依存がなかったため、同治験では低用量群(1mg/kg)と高用量群(3mg/kg)を10例ずつ設け、計20人の2用量コホートとして治験登録を行なったという。
その結果、20例全体で完全奏効2例(10%)、部分奏効1例(5%)、不変6例(30%)、増悪10例(50%)、評価不能1例(5%)にて、奏効率15%、疾患制御率45%だった。なお3mg/kgコホート10例では、奏効率が20%、疾患制御率が40%となり、統計学的に有意差はないものの、臨床的には3mg/kgコホートが有用である可能性が示唆されたという。
同治験結果は、日本から PD-1/PD-1経路阻害薬の治験に関する初めての論文発表となり、今後の国内での同薬剤の開発、加速につながるものと期待される。
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・京都大学 研究成果