■抗癌剤などで個別化実現
経済産業省は、個人差や疾患状態を詳しく見分けることができる生体物質の糖鎖を利用した革新的創薬の技術開発に乗り出す。来年度から開始し、2018年度までに糖鎖と蛋白質を同時に認識する分子を効率的に製造できる技術確立を目指す。将来的には、抗癌剤などで個別化医療に近い形の「糖鎖創薬」を生み出したい考えだ。
経産省は、来年度の概算要求で「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業」に73億7000万円を計上。そのうち、糖鎖を利用した創薬の技術開発に対し、新規事業として10億円を要求する。今後、日本医療研究開発機構(AMED)が委託先の公募を行い、研究先を採択する。
新事業では、18年度までに糖鎖と蛋白質を同時に認識する分子を効率的に製造する技術を確立したい考えである。現段階では、23年度を目標に、この糖鎖技術が製薬企業で5件ほど利用されることを目指している。将来的には、抗癌剤などの分野で「糖鎖創薬」の応用化を図り、個別化医療に近い新薬開発につなげる構想を描く。
今後、同事業で要求している10億円の予算は、確定後、AMEDの重点課題「オールジャパンでの医薬品創出」に交付することになる。AMEDが糖鎖技術を開発する研究プロジェクトを管理し、研究委託先などを公募する予定。現段階で研究プロジェクトの構成は未定だが、大学などと産学連携のネットワークを構築し、創薬を加速化させていきたいとしている。
糖鎖は、蛋白質や脂質に結合する生体物質で、その糖鎖構造の異常が様々な疾病を招くことが分かりつつある。そのため、糖鎖機能の活用が疾病のメカニズム解明や早期診断につながる可能性があるとされ、創薬ターゲットとして注目を集めている。