文科省は、各大学の入学者に対する卒業率と国試合格率、実質競争倍率の関係を整理したデータを提示。実質競争倍率の高い大学では、6年間でストレートに卒業する学生の割合などを示す卒業率や、国試合格率が高い傾向にあり、卒業率、国試合格率とも低い大学は実質競争倍率も低い傾向にあることを示した。
また、実質競争倍率が低いにもかかわらず、卒業率や国試合格率が高い大学が存在している点を指摘。実質競争倍率が低くても卒業率が高い大学では、国試合格率が低く、逆に国試合格率が高い大学は卒業率が低い傾向にあるとのデータを示した。
これらの結果は、学生を適正に選抜できなかった大学では、ストレートに学生を卒業させれば、国試の合格率が下がり、卒業延期や留年などによって国試の合格率を上げようとすると、卒業率が下がるという問題を抱えているという現状を浮き彫りにしているものとみられる。
文科省は、「あくまで指標の一つであり、これらの数値を改善することを最終的な目標とするものではない」としながらも、「進級率や卒業率、国家試験合格率を指標として見た際に、必ずしも順調といえない大学があり、教育の改善充実に向けた一層の取り組みが必要」とした。
厚労省は、「薬学教育が6年制に移行した後の卒業生を対象とした国試の合格率はここ2年間低迷しており、薬学部卒業生の質の確保が急務」とし、改善を促した。
薬学教育協議会の望月正隆代表理事は、「(国試の)問題の傾向が大きく動いている」と述べ、基礎と臨床の知識を組み合わせた複合問題が増えていることが合格率低下の要因の一つになっていることを示唆しつつも、「この動きは決して悪いものではない。固定化して進めていってもらいたい」とした。
全国薬科大学長・薬学部長会議の市川厚会長は、「国試の合格率低下をもって教育の質が低下したというのはどうか」と疑問を呈した上で、6年制の導入によってこれまで以上に高い臨床能力を身に付けた薬剤師が医療現場に輩出されている現状を示し、「6年制のメリットの部分にも目を向けるべき」との考えを示した。
日本病院薬剤師会の松原和夫副会長は、「4年制時に比べ、6年制の(卒業生の)方が様々な知識を持って医療現場に来ていると思っている」とし、一定の効果があったことを認めたが、医師の国試では、基礎と臨床を組み合わせた問題が大半を占めていることから、「医師との比較で今後、どういう問題が必要になるのか考えた方がいい」と述べ、苦言を呈した。
日本薬剤師会の山本信夫会長は、薬剤師として医療現場に出て行こうとする人を評価するための指標として、国試が重要な役割を果たしていることに言及し、「数字だけの議論ではないとは言いにくい部分があるのでは」と述べた。
■改善・充実に努める
全国薬科大学長・薬学部長会議と日本私立薬科大学協会は、この日の懇談会に「薬剤師養成の責務を担う立場から」と題する文書を提出した。医薬分業の是非をめぐる動きが活発化する中、薬学教育に携わる一人ひとりが、医療現場で必要とされる薬剤師の育成に取り組んでいることをアピールしたもので、「6年制教育課程の卒業生が真に修学成果を発揮し、社会的認知を得られるよう、今後も教育の改善と充実に努める」としている。