PEGASUS-TIMI54試験のサブ解析データをESC2015で発表
英国のアストラゼネカは8月31日、P2Y12阻害剤による抗血小板治療の中止後の経過時間に基づいた、心筋梗塞の既往歴を有する患者におけるアテローム血栓性イベント抑制に対するチカグレロルの効果を評価する「PEGASUS-TIMI54試験」サブ解析の詳細データを発表した。現在、欧州のガイドラインでは、心筋梗塞発症後12か月で抗血小板剤の併用治療を中止することを推奨している。
チカグレロルは、急性冠動脈症候群(ACS)に対する経口抗血小板治剤。シクロペンチルトリアゾロピリミジン群(cyclo-pentyl-triazolo-pyrimidines:CPTPs)に分類され、P2Y12受容体に直接作用する。同剤は、血小板活性を阻害することで効果を発揮し、ACS患者において心筋梗塞あるいは心血管死を含む血栓性心血管イベントの発生率を低下させることが示されている。チカグレロルは、海外において「BRILINTA(R)」の製品名で販売されているが、日本国内では未承認。
PEGASUS-TIMI54試験は、アストラゼネカの最大級のアウトカム試験のひとつで、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカ、オーストラリア、アジアの31か国1,100超の施設からの2万1,000例を超える患者を対象としている。
チカグレロル群で、イベントを再発するリスクが27%低下
欧州心臓病学会(ESC)2015の臨床試験アップデートホットラインセッションにおいて発表されたデータによると、P2Y12阻害剤による抗血小板治療の中止によって、心血管死、心筋梗塞あるいは脳梗塞を含む虚血性イベントのリスクが高まることが示されたという。
治療中止後30日以内に同試験のチカグレロル群に無作為に割り付けられた患者は、事後のイベントを再発するリスクが27%低下していた。チカグレロルによる治療のベネフィットはこうした患者群において最大の効果を示し、最後の投薬からの期間が長くなるほどリスクに対する効果が減少していたという。
これらの結果から、心筋梗塞発症後2年以上経過しP2Y12阻害剤治療を1年超中止している安定した状態にある患者に治療を再開するよりも、P2Y12阻害剤治療を12か月以降も中断することなく継続するほうが、ベネフィットが大きいことが示されたとしている。
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