体内で自然に分解され留置物が永久的に残らないAbsorb
アボット ラボラトリーズ社は9月1日、体内で完全に分解される心臓用ステント「Absorb(TM)」に関するABSORB Japan臨床試験の1年経過観察時において、良好な結果が得られたことを発表した。同日、欧州心臓病学会が毎年主催するESC Congress 2015における最新研究成果のセッションにおいて、この試験結果を発表。並びに「European Heart Journal」へも同試験データが掲載された。
Absorbは、従来の金属製ステントと同じく、狭くなった心臓の血管を拡張し血流を回復させて冠動脈疾患(CAD)の症状を改善すると共に、体内で自然に分解される素材が用いられているため、回復した血管に留置物が永久的に残ることがない。そのため、永久的に体内に留置し、血管本来が持つ運動機能を妨げ、将来的な治療の選択肢を制限させる可能性のある金属製ステントとは異なり、治癒後の人々の生活習慣や活動により生じる心臓からのさまざまな要求に応じて、血管が屈曲、拍動、拡張できるようになることが期待されている。
今回のABSORB Japan試験は、同機器の安全性および有効性を、市場をリードする同社のXIENCE薬剤溶出ステントと比較する多施設共同無作為化臨床試験。国内の38医療機関で実施され、心臓疾患のうち最も多いとされるCADを患う400名が登録された。
日本で最初の臨床試験において、主要評価項目を達成
その結果、主要評価項目であるTLF(target lesion failure)の発生率は、Absorbで4.2%、XIENCEで3.8%だった。TLFは、心疾患関連の死亡、治療対象血管が原因の心臓発作および虚血(治療対象血管の低酸素状態)を原因とする治療した病変の再手技を合わせたもので、TLFに関して1年経過観察時点での非劣性を証明できる検定力が設定されている。
主な副次的評価項目とした血管造影上のセグメント内LLL(late lumen loss)の発生率は、血管造影による95%の追跡調査の結果、Absorbで0.13±0.30 mm、XIENCEで0.12±0.32 mmだったという。LLLは、治療対象血管の手技直後の直径を、追跡調査時(今回は13か月後)の血管造影図と比較した差である。
AbsorbとXIENCEのいずれについても、definiteまたはprobableとされるステント血栓症(ST)の発生率は1.5%だった。また、いずれのデバイスでも再手技が行われた割合は低く、Absorbで2.6%、XIENCEで2.3%だったという。
Absorbは、現在90か国以上で販売されている。米国および日本では、現在承認申請を提出中だ。また、今年10月に開催される2015年度TCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)学会において、同社はABSORB 3試験およびABSORB China試験で得られた1年経過観察時における重要なデータならびにABSORB 2の2年経過観察時点のデータを最新研究成果のセッションで発表する予定だとしている。
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・アボット バスキュラー ジャパン株式会社 プレスリリース