米国研究製薬工業協会(PhRMA)の医療技術評価(HTA)タスクフォース委員長を務めるデイヴィッド・グレンジャー氏は、国内で試行的導入に向けた検討が進むHTAについて、薬剤の価値を実証する上で重要との認識を示しながらも、「日本の保険償還や価格決定のシステムには、HTAの概念が内包化されている。そこに費用対効果評価を導入することで医薬品アクセスの遅延につながる可能性がある」と述べ、拙速な導入に反対する考えを表明した。

グレンジャー氏は、HTAを導入した諸外国の状況について、「医療技術等の評価に時間を要し、患者の医薬品アクセスが制限されたり、遅延するなどの副作用を経験している」と指摘。実際、薬事承認から上市までの所要期間を見ると、英国が60週間、豪州が47週間、韓国が37週間、フランスが37週間であるのに対し、未導入の日本は9週間と大幅に短いという。
さらに、「HTAは複雑なシステムであり、患者に関連するアウトカムがどこまでなのかを理解するのが時間を要する」との見方を示し、適切な評価手法や評価基準を採択する必要性に言及。治療の直接的な費用や便益だけではなく、介護や生産性損失への影響等、社会的な費用と便益を含めた包括的な評価を考慮すべきと主張した。生活の質や生存率といった「QALY」の効果指標に、社会的な便益を加味した評価手法の運用が海外で進んでおり、「データに基づき意思決定を行うことが重要」と述べた。