■道経産局 全国初の地域モデルに
経済産業省北海道経済産業局は、北海道内のバイオ産業振興に向け、医薬品開発をワンストップで支援する企業連携体(コンソーシアム)を立ち上げる。道内の大学や研究機関が持つバイオ関連の研究シーズを掘り起こし、コンソーシアムで基礎研究から非臨床試験、臨床試験まで一括受注するほか、道外企業・研究機関が保有するシーズの実用化も支援する。地域経済部バイオ産業課によると、個々の企業が地域で連携し、医薬・医療分野の各種評価業務を一括受託する枠組みは全国的にも初事例という。今年度中に体制を整備し、今後2~3年でプロジェクトを進めていく考えだ。
道内バイオ産業の売上高は、1999年度の105億円から右肩上がりで成長し、2014年度には566億円とほぼ5倍に拡大している。ただ、成長を牽引しているのは機能性食品・化粧品分野であり、医療・医薬については、08年度から横ばいが続いている。
こうした状況を受け、今年度は医療・研究支援分野への取り組みを強化していく方針。その一つが、道内の大学・研究機関が持つ研究シーズの調査だ。医療・研究支援分野が成長期にあった08年以前は、大学発バイオベンチャーが誕生する環境下にあり、北海道大学や札幌医科大学など、大学研究者の研究内容を把握し、それに見合った支援を行っていた。ただ、その後機能性食品・化粧品分野に傾斜させた影響で、最新の研究成果などが把握しきれていない状況にあるという。
今後は、「医薬品」「医療機器」「医療技術」「再生医療」の4分野に関する技術分野について、国の委託費を活用して重点的に調査し、最新の研究内容や研究フェーズ、事業化の見通しなどを体系的に整理し、必要とする施策を検討する。日本医療研究開発機構が設立されるなど、国を挙げてアカデミア発創薬を推進する流れにある中、シーズの橋渡しにつなげていきたい考えだ。
評価・解析については、医薬・食品の機能性・安全性評価を行える企業を中心にコンソーシアムを構築する。道内には、基礎研究で「コスモバイオ」や「ジェネティックラボ」、非臨床試験で「応用医学研究所」「化合物安全性研究所」「ホクドー」「新薬リサーチセンター」、臨床試験で「エクサム」、ゲノム解析で「北海道システム・サイエンス」と多くの企業が存在する。
研究開発の川上から川下まで支援が可能となり、発注者側に対して、ワンストップサービスによる負担軽減や、決められた予算や期間内で必要なデータを揃えるためのコンサルティングによるスムーズな試験実施、納期の短縮などを提案する。また、企業間の連携を促し、受託拡大を狙う。
コンソーシアムでは、医薬品や医療機器などは実用化までに時間がかかることから、特定保健用食品、機能性表示食品など、有効性・安全性のエビデンスが必要となる高機能食品の評価業務にも門戸を広げ、受託を目指す方向。道では、高機能性が認められた食品に認定を与える北海道食品機能性表示制度(ヘルシーDo)といった独自の制度を持っており、道外の食品メーカーからの相談も来ているという。
当面は、コンソーシアムと各社の認知度を高めるべく、関東地域で開催されるバイオ関連の展示会に出展し、各方面に訴求する。バイオ産業課の福島至氏は、「道内産業を支えると共に、国が掲げる健康寿命延伸計画を北海道で推進していく一つの地域モデルにしていきたい」と話している。