治療薬や患者背景による再発への影響を検討
国立循環器病研究センターは8月27日、脳卒中後てんかんで入院した患者の予後追跡データを解析し、脳卒中後てんかんの再発に関係する因子として、抗てんかん薬であるバルプロ酸ナトリウムの単剤療法(バルプロ単剤療法)と若年者(74歳未満)、入院時の痙攣発作の存在が強く影響していることを解明したと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同センター脳神経内科の田中智貴医師、長束一行部長らの研究グループによるもの。研究成果は米国の科学雑誌「PLOS ONE」オンライン版に8月27日付で掲載された。
脳卒中は高齢者のてんかんの原因としてもっとも多く、また、脳卒中後の合併症としても非常に重要なものと考えられている。さらに、脳卒中後てんかんを発症した症例は、その後抗てんかん薬治療を行った場合でも、てんかん発作の再発を繰り返す例も少なくないという。しかしながら、これまで抗てんかん薬の種類や患者背景を総合的に検証した報告は少なく、十分な解明が行われていなかった。そこで、国循で加療を行っている脳卒中後てんかん症例の予後を調査し、治療薬や患者背景による再発への影響を検討した。
前向きな検討による詳細な解析が必要
研究対象は、国循に脳卒中後てんかんで入院し、その後予後が追跡調査可能であった104症例で、後ろ向きに患者背景や検査データを解析し、その後の再発までの治療内容やその他の合併症と比較。観察期間は中央値で362日となり、結果31人(全体の29.8%)がてんかんの再発を来していた。てんかん再発に関連する因子を当該31人のデータから解析した結果、バルプロ酸単剤療法、若年者(74歳未満)、入院時の痙攣発作の存在が強く影響していることが判明したという。
同研究では、脳卒中後てんかん再発防止にバルプロ酸単剤療法の効果が乏しい可能性が示された。しかし、今回の研究は後ろ向きの追跡調査であり、今後さらなる前向きな検討によって詳細に解析する必要があるとしている。また、研究時(2011年1月~2014年2月)には新規の抗てんかん薬(レベチラセタム、ラモトリギンなど)は単剤投与が保険適用されておらず、こういった新規の抗てんかん薬は他のてんかん治療においても旧世代の治療薬よりも副作用や他剤との薬物相互作用が少なく、再発防止効果も期待されている。
国循は今後、さらなる検証のため、脳卒中後てんかんの治療について登録観察研究を行っていきたいとしている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース