Tリンパ球機能至適化の新機構、「正の選択」の本質
徳島大学は8月25日、同大学疾患プロテオゲノム研究センターの高田健介講師と髙濵洋介教授らが、生体防御の中心的役割を担うTリンパ球が胸腺でつくられる過程で必須のプロセス「正の選択」が、Tリンパ球の機能成熟を至適化することを見出したことを発表した。この研究成果は、米国国立衛生研究所、米国ミネソタ大学、東京都医学総合研究所、東京大学、名古屋大学との共同研究によるもので、「Nature Immunology」のオンライン版に8月24付で掲載されている。
画像はリリースより
免疫応答の司令塔であるTリンパ球は、ウイルスなどの病原体やがん細胞を認識して生体防御に不可欠な役割を担っている。1個1個のTリンパ球はそれぞれ異なる抗原を認識する受容体をもっているが、未熟なTリンパ球のなかには、異物を認識できない無用な細胞が数多く含まれる。
胸腺内で有用なTリンパ球を選択するプロセスとして、胸腺上皮細胞に依存する「正の選択」という現象が存在することは、以前から知られていた。しかし、「正の選択」が実際どのように有用なTリンパ球を作り出すのか、その仕組みは不明だったという。
免疫システムの根幹的な形成機構解明に大きな進展
今回、同研究グループは、Tリンパ球が病原体などの異物に対して有効に応答できる能力を獲得するには、胸腺上皮細胞に発現される胸腺プロテアソームという分子に依存してひきおこされる「正の選択」が不可欠であることを明らかにした。
胸腺で新たに産生された幼若Tリンパ球は、ひとつひとつ異なる抗原受容体の認識特異性を持っており、集団として抗原認識の多様性を有している。しかし、幼若Tリンパ球に発現される抗原受容体は、胸腺上皮細胞に発現される自己ペプチドと相互作用し、適度な親和性の相互作用を示す幼若Tリンパ球のみが生存維持を許され、成熟Tリンパ球へと分化する。この細胞選別プロセスが「正の選択」だ。
同研究では、胸腺プロテアソーム依存性に胸腺上皮細胞に発現される自己ペプチドは、抗原受容体との相互作用において適度な親和性をもつだけでなく、「正の選択」によって選別するTリンパ球の機能を至適化することを見出したという。
同研究グループは、この結果が、感染症やアレルギー疾患など、免疫システムが関連する難治性慢性疾患の根本的な治療法開発につながるものと期待を寄せている。
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