■合田氏が講演
「和漢薬の作用機序・臨床効果」をテーマに22~23の2日間、富山市内で第32回和漢医薬学会学術大会が開かれ、約600人の医師、薬剤師が参加した。現在、認知症の周辺症状に対する抑肝散や、逆流性食道炎への六君子湯など臨床現場で汎用されている漢方薬の作用機序が解明されつつある中で、基礎から臨床における和漢薬研究の新たな方向性に向け議論が行われた。「医薬品の品質保証と生薬および生薬製剤」をテーマに特別講演した合田幸広氏(国立医薬品食品衛生研究所薬品部長)は、日本における天然物医薬品の標準化の必要性を訴え、承認申請を判断するためのガイドラインの作成に向けて学会として取り組むべきとの考えを示した。
合田氏は「(天然物医薬品については)長く議論をしない時期が続いていたがために承認審査基準の進歩から取り残されている。このため、剤形変更や新規の効能・効果が取得できない。そうすると新規の医薬品ができず、この分野全体が停滞する」と強調。その解決に向けては「最後は学会がこのレベルであればいいということを決めていくことが落としどころ。サイエンティフィックな議論をして詰めていくことが必要。そうすれば新しい医薬品の道が開かれ、この分野がより活発になる」との考えを示した。
米国では2004年にボタニカルドラッグプロダクトの新規医薬品承認のガイドラインが策定され、その結果として06年に「Vergen」、12年に「Fulyzaq」などの製品が承認されていることを紹介。「日本でも、こうしたガイドラインがあれば、チャレンジする企業が出てくる」とした。
また、「新規な効能・効果の取得を目指すことが重要なこと」とし、医療上の必要性の高い適応外薬として既存の漢方エキス製剤で明確なエビデンスのあるものについて、「先駆けパッケージ戦略」に基づいた「未承認薬迅速承認実用化スキーム」に乗り、適応外公知申請という手法をとることも提言。「これには、他分野のメディカルドクターのバックアップが重要だが、日本で使われている生薬、漢方薬についても新しい効能・効果が取得できるのではないか」と提案した。
今後、新規な効能・効果をとるための基盤となる、多成分系医薬品の品質保証のためのガイドラインが数年後にできれば、そのガイドラインに従って、天然物医薬品について新しい分野が開けると思うとの考えを述べた。
大会長を務めた白木公康氏(富山大学大学院医学薬学研究部ウイルス学教授)は、「今後、わが国の和漢薬分野がさらに発展し、活発化していくためには漢方製剤の新規のいわゆる植物薬の開発と承認が必要」とし、それに向け新たな植物薬について日本の医薬品としての独自の品質保証のあり方を明確化するべく取り組むことは、学会としての重要な課題との認識を示している。