■総合戦略案示す
厚生労働省は24日、後発品の数量割合を8割に引き上げるに当たって、医薬品産業の競争力を強化するための総合戦略の骨子案を、「革新的医薬品・医療機器創出のための官民対話」に示した。新薬メーカーに期待される役割を、グローバル展開できる革新的医薬品の創出と位置づけ、今後新薬が創出できなかった新薬メーカーは事業転換が迫られ、日本の新薬メーカーもM&A等による事業規模の拡大を視野に入れるべきと提起。後発品メーカーのあり方についても集約化、大型化を含めた検討を促した。来週にも戦略の全文を公表する。
厚労省は、2年前に新たな医薬品産業ビジョンを策定しているが、6月に閣議決定された骨太方針で後発品の数量を8割へ引き上げる新目標が明記された。総合戦略は、後発品の使用拡大により、長期収載品のシェア減少等、国内市場の急激な変化が予想されることから、医薬品産業の国際競争力を強化するため必要な措置としてまとめたもの。
日本の製薬企業については、多くの大手企業が長期収載品に収益を依存しており、転換が急務との認識を示すと共に、新薬開発費用が高騰する一方、企業の規模が小さいと指摘。後発品市場についても規模の小さい企業が多数存在し、体質強化が課題との問題意識を示した。
国内市場の8割を後発品が占め、新薬が2割しかない状況になると、長期収載品で収益を支えてきた新薬メーカーのビジネスモデルは成り立たなくなることが予想されるため、新薬メーカーに期待される役割を、グローバル展開できる革新的医薬品の創出と位置づけた。
今後、新薬を創出できなかった新薬メーカーは事業転換が迫られるとの論点を示し、研究開発費の高騰やグローバル展開を考えた場合、国内新薬メーカーもM&Aによる規模拡大を視野に入れるべきとした。
後発品メーカーに対しても、後発品数量の8割を達成した後は、国内市場の拡大余地は小さいと指摘。今の段階から将来を見越し、集約化、大型化も含めた検討が必要とした。
後発品の使用促進の加速化については、国民負担の軽減等の観点から、後発品薬価のあり方を検討する。規格揃えは、企業の製造販売や医療機関、医薬品卸における在庫管理の負担になるとし、2015年度中に見直しを行う方針を明記した。
一つの先発品成分に対して三十数品目と多くの後発品が薬価収載されることにも対応策を検討していく方針を盛り込んだ。
品質確保に向けては、品質への不安が指摘される海外製造所の実地調査を増やすため、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の品質管理部門の体制強化を目指すほか、流通品の試験検査で溶出試験等の検査対象品目数を増やす。
流通政策は、後発品が数量の大半を占めることになるため、適正で効率的な流通に向け、収益構造の変化に対応した流通モデルの再構築を図るとし、新規収載品目について有効期限、製造番号等の変動情報を含んだ新バーコード表示を必須化するとした。
一方、創薬イノベーションを進めるため、新薬創出等加算制度のあり方について検討を行うと共に、最低薬価では市場への供給が難しくなる基礎的医薬品については、継続的な安定供給の確保が必要とし、薬価上必要な措置などを検討するとした。