■厚労省会議が初会合
厚生労働省は20日、ナショナルセンターの疾患登録システムを活用し、新薬の治験や臨床研究を加速させるため、産学官で具体策を検討する「臨床開発環境整備推進会議」の初会合を開いた。今後、各センターはワーキンググループ(WG)を設置し、疾患登録情報の内容や提供方法を検討。厚労省は全センターに共通するレジストリーなどWGの横串を刺す仕組み作りに取り組み、効率的な治験が実施できるクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の構築を目指す。
この日の初会合では、各センターの疾患登録情報を治験や臨床研究に活用するため、各センターと臨床研究中核病院が一体となったCINの概要が示され、各センターから疾患登録システムの取り組み状況が報告された。CINの整備に向けては、各センターが特定疾患を対象に、製薬企業や国内の協力病院と共同で疾患登録情報を活用する治験コンソーシアムを構成。さらに、協力病院と治験連携事務局を設置し、企業ニーズの把握や治験相談等を一括して受け付ける体制を整備することにより、インフラを構築していく。
各センターは、がん、循環器、精神・神経、国際医療、成育、長寿、難病の七つのWGを設置。製薬企業や医薬品医療機器総合機構(PMDA)、日本医療研究開発機構(AMED)なども参加し、疾患登録システムの内容や情報提供の方法を検討する。さらに、厚労省は治験リクルートや対照群代替用のレジストリーなど、全てのセンターに共通する事項を議論し、それぞれのWGの横串を刺す仕組みの構築に取り組む。
また初会合では、各センターから疾患登録情報システムの取り組み状況が報告され、今後のWGの運営方針が示された一方、業界団体の日本製薬工業協会は、CIN構築に当たって、対象疾患における患者の診断方法、診断基準の統一化や医薬品開発への活用を意識した疾患ごとのデータ収集に関する検討が必要との意見を表明した。
ただ、オブザーバーの委員からは、「疾患登録情報は、治験組み入れ基準に入るデータでなければ意味がない」「文部科学省の橋渡し研究加速ネットワークプログラムの拠点でも似た事業が始まっている。二重登録にならないよう一本化を考えてもらいたい」などの意見があった。
また、「ネットワークでどういうデータが必要なのか分かりにくい。もう少し目的をはっきりして、シンプルなスキームにしてほしい」との注文も出た。