過剰な掻破による皮膚損傷の“悪循環”の抑制につながるか
生理学研究所は8月12日、経頭蓋直流電気刺激法による痒み知覚の抑制効果を明らかにする研究結果を発表した。この研究は同研究所の柿木隆介教授および中川慧研究員(現所属:広島大学)らによるもの。
画像はリリースより
同研究は、文部科学省科学研究費補助金、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業、および革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)の補助を受けて行われ、研究成果は、「Clinical Neurophysiology誌」の9月号に掲載予定である。
痒みが掻破により抑制されることはよく知られている。しかし、掻破は快感を伴うため、過剰な掻破を引き起こしかねない。特にアトピー性皮膚炎などの慢性的な痒みに悩まされる患者にとっては、過剰な掻破により新たな皮膚損傷を引き起こされるといった悪循環につながる。そのため、掻破に変わる新たな抑制法の発見・開発は、痒みに悩まされる患者にとって大きな意義をもつものとして研究が進められてきた。
ヒスタミン刺激に対する痒み知覚が減少、痒みの持続時間も短縮
研究グループは、大脳皮質感覚運動野を非侵襲的に刺激することで痛み知覚が抑制されるという現象に注目し、痒み知覚に対しても同様の抑制効果がみられるかどうか検討した。脳刺激には、微弱な電流を流すことで大脳皮質の興奮・抑制性をコントロールする経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation:tDCS)を用いたという。
このtDCSを15分間施行した結果、ヒスタミン刺激に対する痒み知覚が減少し、さらに痒みの持続時間が短縮することが判明した。同研究は、新たな痒みの抑制法の開発につながる成果として、今後に期待が寄せられている。
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・生理学研究所 プレスリリース