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がんの浸潤・転移に関わる上皮間葉転換を促進するマイクロRNAを発見-東京医歯大

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2015年08月12日 PM05:00

機能的EMTスクリーニング系を構築し、「miR-544a」を同定

東京医科歯科大学は8月6日、同難治疾患研究所・分子細胞遺伝分野の村松智輝助教、稲澤譲治教授らの研究グループが、独自の細胞ベース機能的EMTスクリーニング系を構築し、がんの悪性化機構の一つである上皮間葉転換 (EMT)を促進する機能性低分子RNAであるマイクロRNAの同定に成功したと発表した。


画像はリリースより

がん転移は、これまでにもさまざまな分子機序が報告されている。特に上皮系から間葉系へと形質転換する現象である上皮間葉転換(Epithelial Mesenchymal Transition: EMT)は、がんの浸潤・転移と密接な関与が知られており、その機序の解明はがん治療の発展に重要とされている。

研究グループは、間葉系細胞への変化を検出する機能的EMTスクリーニング系を構築し、EMT促進性miRNA(miR-544a)の同定に成功。同スクリーニング系では胃がん細胞株(MKN1)を用い、EMTの可視化には、間葉系マーカー遺伝子ビメンチンのプロモーター活性を指標として、赤色蛍光分子RFPを発現するベクターを使用した(PVimRFP)。

このPVimRFPを導入したMKN1(PVimRFP-MKN1)に、328種類のmiRNAを搭載したPre-miRTM miRNA Precursor Library-Human V2を作用させ、RFP蛍光強度を指標にスクリーニングを行い、 EMT誘導性miRNA候補としてmiR-544aを選出。miR-544aの過剰発現により、間葉系誘導マーカーのZEB1、Snailの発現が上昇した一方、上皮マーカーのE-カドヘリンの減少が認められ、TGF-β経路に影響を与えることが確認されたという。

核酸薬の治療標的分子の候補としても期待

また、E-カドヘリンがmiR-544aの直接の標的遺伝子であること、さらにmiR-544aはWNT経路にも作用してβカテニン分解系に関わるAXIN2やAPC2の発現を抑制することでβカテニンを安定化し、その結果、TCF/LEFを活性化することで間葉系維持に関わる遺伝の転写を促進することが明らかになった。これらのことからmiR-544aがTGF-β、WNTの両経路に作用することにより、EMTを誘導することを明らかにした。

これまで、EMT抑制性miRNAは数多く同定されているが、EMTを促進させるmiRNAの報告は少なく、今回の研究成果は、EMTの本態解明に資する発見といえる。さらに、今回のスクリーニングに用いた胃がん細胞株MKN1は、高転移性のスキルス胃がんに由来することから、EMT促進性の分子として見出されたmiR-544aは、スキルス胃がんの悪性度判定のバイオマーカー、また、近年着目されてきている核酸薬の治療標的分子の候補としても期待されるとしている。

なお、同研究成果は国際科学雑誌「Carcinogenesis」オンライン版に8月11日付で掲載されている。

▼関連リンク
東京医科歯科大学 プレスリリース

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