近年注目を集める天然物をベースとした新規医薬品開発
東北大学は8月6日、カビが作り出すポリケタイド化合物の生合成中間体を利用して、医薬品を開発するうえで鍵となるシーズを創出するための新たなアプローチを提示する研究結果を発表した。この研究は、同大学大学院薬学研究科と、同大学院農学研究科、同大学院医学系研究科、岩手医科大学との共同研究グループによるもの。研究成果は、科学専門誌「Nature Chemistry」電子版に8月3日付けで掲載されている。
画像はリリースより
天然物をベースとした新規医薬品開発は近年注目されており、新しいケミカルスペースを開拓することが、医薬品を開発においても重 要な課題の1つとなっている。同研究グループは、構造的に興味深いポリケタイド化合物を生産するケタマカビ (Chaetomium)に着目し、研究を進めていた。
アデノウイルスに対する抗ウイルス効果を持つ化合物も発見
研究グループは、これらの中間体の生合成に関わる遺伝子を麹カビ (Aspergillus oryzae) で異種発現させる方法と単離した中間体を化学変換する方法を組み合わせた半合成的なアプローチにより、天然物と類似した骨格を有する分子の多様性を飛躍的に拡大させることに成功した。
この方法では、生合成中間体の潜在的な反応性の高さを利用した半合成プロセスを開発することで、多様な化学構造を有する数多くの非天然型新規ポリケタイド化合物を簡単に合成することが可能となったという。また、合成した化合物から、これまで治療薬がなかったアデノウイルスに対して抗ウイルス効果を発揮する化合物を見出した。
本来の代謝過程において様々な構造へと変化する中間体は、人為的に容易に多様化することができ、この研究によって、新しいケミカルスペースの開拓に有用であることを実証したことになると研究グループは述べている。
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