1960年代から行われていたアリインの生合成機構に関する研究
千葉大学は8月3日、ニンニクの薬理効果と健康機能作用の本体である含硫黄化合物「アリイン」の生産の鍵となる酵素遺伝子を世界で初めて発見したと発表した。
画像はリリースより
この研究は同大大学院薬学研究院の吉本尚子助教、齊藤和季教授らと、理化学研究所、ハウス食品グループ本社株式会社、湧永製薬株式会社の共同研究によるもの。研究成果は、英科学雑誌「The Plant Journal」オンライン版に8月4日付で掲載されている。
ニンニクは古くから薬用利用されており、近年では発がん抑制や循環器疾患の改善効果が注目されている。ニンニクの示す薬理作用や健康機能効果の本体は、ニンニクが生産する含硫黄化合物であるアリインで、その薬学的重要性から、アリインの生合成機構の解明を目指した研究は1960年代から行われてきたが、生合成に関わる酵素遺伝子はほとんど未解明のままだった。
薬用・健康機能成分の効率的生産や創薬、育種に期待
今回研究グループは、ニンニクが属するネギ属植物の遺伝子配列の生物情報学的解析に基づき、アリイン生合成の鍵となる酵素遺伝子「AsFMO1」の同定に成功。同遺伝子から作られるAsFMO1タンパク質の酵素機能を解析した結果、この酵素がアリイン生合成経路の最終段階において、生合成中間体の硫黄原子を酸化する機能を持つことが判明したという。
さらにAsFMO1タンパク質は、フラビン含有モノオキシゲナーゼと呼ばれる比較的珍しいタイプの酸化酵素の1種だったことも明らかになった。ニンニク植物体におけるAsFMO1遺伝子の発現部位とアリイン貯蔵部位を解析した結果、AsFMO1はニンニク植物体のさまざまな組織で発現し、アリイン生産に関与していることが示されたという。
ニンニクやその他のネギ属植物は、アリイン以外にも類似の化学構造を持ち薬学的に重要な含硫黄化合物を多く含んでおり、それら含硫黄化合物の生合成にもAsFMO1やその相同遺伝子が関わっている可能性が推測されている。今後は、AsFMO1遺伝子の機能を応用することによって、植物や微生物を用いた有用含硫黄化合物の生物生産系の開発、新規の薬効を示す含硫黄化合物の創薬、さらに薬用性が高いニンニクやその他のネギ属植物の効率的な育種が期待できるとしている。
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・千葉大学 プレスリリース