リン脂質を輸送するタンパク質Ups1-Md35複合体の立体構造を決定
京都産業大学は8月3日、同大総合生命科学部の遠藤斗志也教授と渡邊康紀日本学術振興会特別研究員(京都産業大学)ら研究グループがミトコンドリアの外膜から内膜へリン脂質を輸送するタンパク質Ups1-Md35複合体の立体構造を解明し、その立体構造に基づいた変異体を用いた解析から、Ups1-Md35複合体がミトコンドリアの2枚の膜間でリン脂質を輸送するメカニズムを解明したと発表した。
画像はリリースより
生命活動に必要なエネルギーを産生するなど、ヒトの健康に重要とされるミトコンドリアの機能に必須となるリン脂質は、水に溶けない性質を持っている。このリン脂質が、水に満たされた細胞内でどのように脂質でできた生体膜から生体膜へと特異的に輸送されるのかという「細胞内の脂質配送」の仕組みについては、今までほとんど分かっていなかった。
脂質配送の欠陥が引き起こす疾患の治療法開発へ
今回の研究では、ミトコンドリア外膜から内膜へリン脂質分子を輸送するタンパク質Ups1-Md35複合体の遊離型およびリン脂質結合型の立体構造を決定。その決定した立体構造とその変異体を用いた解析から、タンパク質Ups1-Md35複合体が、いったん「脂質膜」に結合して、そこから運ぶべき脂質を引き抜き、次に「水中」を移動して目的地の「脂質膜」へと脂質を送り込むという、脂質輸送のメカニズムを初めて解明。細胞内でさまざまな脂質が、誤送も遅配もなくスムーズに目的地に配送される、謎に満ちた脂質流通の仕組みを明らかにしたという。
この研究成果により、生命活動に必要なエネルギーを産生し、ヒトの健康や老化への関係が注目されるミトコンドリアの機能を支えるリン脂質を正しく供給する仕組みを解明し、リン脂質供給の異常により引き起こされる疾患の病因の理解や治療法開発への貢献が期待される。
なお研究成果は、英科学誌「Nature Communications」オンライン版に8月3日付で掲載されている。
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・科学技術振興機構 共同発表