経口ステロイド以外に治療法のない希少難病
京都大学は7月31日、高安動脈炎の発症に関わるIL-12B遺伝子がコードするIL-12/23 p40(以下、p40)を抑制する薬である「ウステキヌマブ」を、3人の高安動脈炎患者に投与し、症状および血液炎症所見の改善効果を認め、新規治療薬となる可能性を世界で初めて示したと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大学医学研究科附属ゲノム医学センターの寺尾知可史特定助教(現ハーバード大学博士研究員)と、医学研究科の吉藤元助教(内科学講座臨床免疫学)らの研究グループによるもの。研究成果は、近日中に欧州医学雑誌「Scandinavian Journal of Rheumatology」電子版に掲載されるという。
高安動脈炎は日本に約6,000人の患者がいるとされる希少難病。大動脈およびその分枝血管に炎症性の狭窄や動脈瘤をきたす疾患で、発症年齢は20代が最多と若く、女性に多いのが特徴だ。標準治療薬として経口ステロイドがあるが、ステロイドを減量すると約半数で再燃がみられ、進行すると大動脈弁閉鎖不全、失明、脳梗塞、大動脈瘤などの重大な合併症をきたし、またステロイドの長期投与による副作用が問題となる。しかし、ステロイド以外に、高安動脈炎に特異的な治療薬は確立されていなかった。
首の痛みなどの症状、炎症所見のCRP・赤沈も改善
研究グループは2013年、複数の協力施設と患者会「あけぼの会」の協力を得て、379人の患者DNAサンプルを収集し、全ゲノム関連研究により、p40をコードするIL-12B遺伝子が、高安動脈炎の発症に関連することを報告。さらに、同遺伝子が高安動脈炎の合併症である大動脈弁閉鎖不全と相関することを見出した。
p40を標的とする抗体製剤であるウステキヌマブは、p40が発症に関わる別の皮膚疾患である尋常性乾癬の治療薬として開発され、同じくp40が発症に関わる炎症性腸疾患の患者を含めて、すでに世界で約20万人に投与されている。研究グループは、今までの研究結果により潰瘍性大腸炎と高安動脈炎が共通の発症関連遺伝子を有することから、同薬が高安動脈炎に有効であるという予想を立て、既存治療に抵抗性の患者3名に同薬を投与(1回45mgを4週間隔で2回投与)して有効性と安全性を確認するパイロット臨床研究を実施した。
その結果、投与開始から1~3か月後に、頭痛・首の痛み・倦怠感などの症状が改善し、血液検査上の炎症所見であるCRP、赤沈も改善。約3か月の研究期間に、特段の副作用も認めなかったという。一方、治療前後に行った画像検査では、血管の炎症を示す所見に著変を認めず、長期的予後の改善効果については更なる検討が必要であるとしている。
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・京都大学 研究成果