既に米欧豪では稼働。アジア初となる導入
不整脈をはじめとする心臓手術では、従来までカテーテルの位置を把握するためにX線による透視は不可欠であり、手技を行う間、患者はもちろん、医療従事者も放射線の被ばくが続くことになる。先進国では医療被ばくによる被ばく量は、1人あたり3.9ミリシーベルトにのぼっており、平均的な自然被ばく量である2.1ミリシーベルトを超えている。また、心臓再同期療法(CRT)やアブレーションなどの複雑な症例になると、患者と医療従事者の被ばく量はさらに増加する傾向にある。
杏林大学医学部付属病院内に設置された
MediGuideテクノロジーを説明する
同大医学部第二内科学教室臨床教授 副島京子先生
セント・ジュード・メディカル株式会社が2014年11月に薬事承認を取得した、3次元位置情報ナビゲーションシステム「MediGuideテクノロジー」が2015年7月より東京・三鷹市の杏林大学医学部付属病院に導入されたことを受け、同病院で記者発表会が行われた。同システムは、磁気位置追跡システムを使って、診断用カテーテルやガイドワイヤーなどのデバイスに埋め込まれた超小型センサーの位置を特定。事前に録画したX線透視画像上に、これらの専用デバイスの位置情報を重ね合わせて描出する。これにより、通常の手技の流れと同じやり方で被ばく量を大きく軽減できる。
医療被ばく軽減に医療関係者も大きな期待を
「MediGuideテクノロジー」は心房細動患者の電気生理学的検査とアブレーション術、CRTに使用する植込み型除細動器・ペースメーカ リード挿入術において利用されている。同社によると、アブレーション治療において、従来と比較して約40~95%被ばく量が削減されたとのこと。
記者発表会では、同システムを導入した、杏林大学医学部 放射線医学教室主任教授の似鳥俊明先生、同大医学部第二内科学教室臨床教授の副島京子先生、そして同システムによる多くの心臓手術経験を持つライプチヒ大学心臓病センター准教授のフィリップ・ソマー先生が講演を行い、医療被ばくを低減しつつも、従来と変わらない手技を行うことができる同システムに大きな期待を寄せた。似鳥先生は「これまで、患者さんに対して、具体的に決められた被ばく限度量はなく、医師が放射線障害の危険度を最小化する責任を負っています。2015年になって、これまで施設間でばらつきのあった医療被ばく線量の目安がまとめられました。今回のMediGuideテクノロジーの導入は、患者さんはもちろん、医師や技師にとってもメリットがあります」とコメントした。