自己免疫疾患や喘息、がんの発症リスクにもかかわる肥満
千葉大学は7月31日、医学研究院の遠藤裕介特任講師、中山俊憲教授らのグループが、JST戦略的創造研究推進事業において、肥満患者に高発現している脂肪酸合成酵素「ACC1」に自己免疫疾患を引き起こす作用があることを発見したと発表した。
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この研究は、同大学医学研究院の細胞治療内科学・横手幸太郎教授のグループと共同で行ったもの。研究成果は米科学誌「Cell Reports」オンライン版に7月30日付で掲載されている。
内臓脂肪蓄積を伴う肥満症は、糖尿病や脂質異常症、高血圧などのいわゆる生活習慣病と密接に関わっている。肥満関連疾患というと、糖尿病や動脈硬化性疾患が注目されがちだが、自己免疫疾患や慢性の気道炎症疾患である喘息、がんなどの免疫担当細胞との関わりの深い疾患の発症リスクが高まることも明らかになっている。
脂肪酸合成経路を創薬ターゲットとする治療法確立や創薬開発へ期待
同グループは、肥満環境下にあるヘルパーT細胞(Th細胞)は遺伝子レベルで変化があるのではないかという仮説を立て、野生型および高脂肪食付与による肥満マウス由来のCD4陽性ヘルパーT細胞を用いて、細胞内の遺伝子発現量を網羅的に測定するゲノムワイドマイクロアレイ法で解析を行った。
その結果、肥満環境下のCD4陽性Th細胞に脂肪酸代謝の律速酵素であるACC1が高発現していることを発見。また、慢性のステロイド抵抗性気道炎症や自己免疫疾患を引き起こすTh17細胞の割合とACC1の発現レベルに相関関係があることを、肥満患者検体で明らかにしたという。さらに、ACC1は脂肪酸合成経路を活性化し、Th17細胞のマスター転写因子であるRORγtの機能を制御することで、Th17細胞分化を促進するという新たな仕組みを解明した。
今後は、どの脂肪酸代謝物がRORγtの活性化に必須であるかを探索することで、Th17細胞による炎症性疾患の予防や新規診断マーカー、治療に結びつく可能性が広がるとともに、ACC1やACC1が制御している脂肪酸合成経路を創薬ターゲットとすることで、将来的に肥満関連疾患の治療開発に役立つことが期待される。
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