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MRI検査による不安定プラークの検出が臨床応用できることをスタチン治療により証明-国循

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2015年08月04日 PM02:45

周囲の心筋に比べ1.4倍以上も「輝き」が強い不安定プラーク

国立循環器病研究センターは7月31日、野口暉夫冠疾患科部長ら心臓血管内科グループと新古賀病院の共同研究チームが、心筋梗塞に発展する可能性の高い、危険な動脈硬化巣である不安定プラークを検出する心臓MRI検査法が、臨床応用できることを世界で初めて証明したと発表した。


画像はリリースより

急性心筋梗塞や不安定狭心症は、冠動脈血管壁のプラーク(動脈硬化巣)が突然破綻して血栓を形成し、血管が塞がれることで起こる。通常、不安定プラークの検出には冠動脈CTが使用されているが、CT検査方法は被曝や造影剤の副作用等のデメリットがあるため、より体への負担を軽減した新しい検査法の開発が望まれていた。

研究グループは、これまでに冠動脈のMRI撮影に成功。心事故を引き起こす不安定プラークは、周囲の心筋に比べ1.4倍以上も「輝き」が強いということを明らかにしていたが、不安定プラークを安定化させる作用のある抗動脈硬化薬を服用する過程において、プラークの輝度も比例して減弱するのかという点はまだ不明だった。

今回の研究では、冠動脈疾患患者48人にLDLコレステロールを強力に低下させる「ピタバスタチン」を12か月間服用してもらい、服用前と服用12か月後にMRI装置を用いて冠動脈プラークを撮影。白く輝いて描出されるプラークの輝度の変化を分析し、ピタバスタチンを服用しなかった対照患者群のプラーク輝度の変化と比較した。

ピタバスタチンの服用で、プラークの輝度は約19%低下

その結果、ピタバスタチンを服用し、悪玉コレステロールが低下した患者群(目標LDL-コレステロール値80mg/dl未満)では、プラークの輝度は約19%低下したが、スタチンを未服用群は逆に19%上昇。さらに、ピタバスタチン服用による輝度の低下は、上述の「周囲の心筋に比べ1.4倍以上輝きが強い不安定プラーク」であるほど顕著なことがわかったという。

これにより、被曝や副作用の心配の無いMRIで不安定プラークを同定できること、さらに抗動脈硬化作用の期待できる薬剤の効果判定にMRIを用いた評価法が有用であることが明らかになった。今後、研究に用いられた1.5テスラのMRI装置よりもさらに鮮明な画像が得られる3テスラMRI装置を用いた多施設研究で、同研究の結果を検証していく予定としている。

なお、今回の研究成果は専門誌「Journal of American College of Cardiology」に掲載されている。

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国立循環器病研究センター プレスリリース

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