甲状腺がんにおける適応拡大に向けて
バイエル薬品株式会社は7月31日、抗悪性腫瘍剤/キナーゼ阻害剤「ネクサバール(R)錠 200mg」(一般名:ソラフェニブトシル酸塩錠)について、甲状腺がん治療薬として製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。
今回の申請は、根治切除不能な分化型甲状腺がんに、甲状腺未分化がんおよび甲状腺髄様がんを追加し、甲状腺がんとしての適応取得を目的としたもので、日本人患者を対象に実施したソラフェニブの国内第2相臨床試験の成績に基づいているという。
厚生労働省平成23年患者調査によると、日本人における甲状腺がん患者数は約29,000人。主に乳頭がん、濾胞がん、低分化がんを含む分化型甲状腺がんは、全甲状腺がんの95%以上を占めるが、甲状腺未分化がん、甲状腺髄様がんはそれぞれ全体の1~2%と非常に稀ながんだ。
甲状腺未分化がんは進行が非常に早く、極めて予後不良である。治療は、手術、放射線外照射、化学療法(抗がん剤治療)を組み合わせて行うのが一般的だが、標準的な治療法は確立されていない。甲状腺髄様がんは分化型甲状腺がんと同様に進行が比較的緩徐であり、治療の第一選択肢は手術だが、進行すると予後不良となる。進行性の甲状腺髄様がんに対して有効性が報告されている治療薬もあるが、いまだ標準療法としては確立しておらず、治療選択肢のメディカルニーズは高いと言える。このように、甲状腺未分化がんや進行した甲状腺髄様がんに対する治療選択肢は限られていた。
さまざまながんの治療薬として100か国以上で承認取得
ソラフェニブは、肝細胞がん、腎細胞がん、分化型甲状腺がんの治療薬として、「ネクサバール」のブランド名で販売。国によって承認内容は異なるが、すべての適応症について、100か国以上で承認されている。
非臨床試験では、ネクサバールは腫瘍の増殖に重要な役割を果たす細胞増殖(腫瘍の成長)と血管新生 (腫瘍への血液供給)のそれぞれに関与すると考えられている複数のキナーゼ(Rafキナーゼ、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-B、KIT、FLT-3、RETなど)に作用することが示されたという。
日本では、ネクサバール錠は2008年1月に「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」、2009 年5月に「切除不能な肝細胞がん」、2014年6月に「根治切除不能な分化型甲状腺がん」の効能・効果で承認されている。
今回の適応拡大によって、ネクサバールが、標準的な治療法が確立されていない甲状腺未分化がんおよび甲状腺髄様がんに対する新たな治療選択肢となることが期待されると同社は述べている。
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・バイエル薬品株式会社 ニュースリリース