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「ネットワーク理論」に基づいた新たな統合失調症の解析手法を開発-NICT

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2015年07月30日 PM06:00

統合失調症患者群と健常者群それぞれに特徴的な脳部位モジュールを推定

情報通信研究機構(NICT)は7月28日、NICT脳情報通信融合研究センター(CiNet)の下川哲也主任研究員と大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授のグループが、安静時の脳活動の脳画像データに対して、脳内を活動の類似性で色分け(モジュール化)することにより、統合失調症患者群と健常者群それぞれに特徴的な脳部位モジュールを推定する安定的な手法を開発したと発表した。研究成果は、第38回日本神経科学大会において、同日記者発表されている。


画像はリリースより

客観的な検査等による統合失調症の診断法は未だ確立していない。脳活動のfMRI(機能的磁気共鳴画像)データの分析においては、従来は、「脳のどの部位が記憶にかかわるか」といった、主に、特定の部位を推定することに重きを置いていたが、研究が進むにつれて、実際には、複数の脳部位の相互作用で、機能の発現や病気の発症に至っている可能性が見えてきた。

この脳全体の相互作用を表現する学問に「ネットワーク理論」がある。今回、同研究グループは統合失調症のデータを解析するにあたり、最も有効なネットワーク理論として「モジュール」に着目したという。

診断を補完する自動診断システムの開発に期待

これまでの脳研究におけるモジュール解析は、個人の脳の解析には適用例があるものの、数十人の被験者を扱う集団解析の例はほとんどなかった。その理由として、個人のモジュール構造のばらつきが大きすぎて、集団を特徴付けるモジュール構造を推定できないことにある。健常者群と患者群を判別するためには、同一群のばらつきが少なく、両群を比較すると大きな差が出るような、適当な指標を選ぶ必要があるが、集団のモジュール構造については、まだできていないのが現状だった。

そこで研究グループは、統合失調症患者の安静時脳活動のfMRIデータに対して、被験者間の差を考慮しつつ、今までの各個人でモジュール分け(色分け)する方法ではなく、新しい試みとして、平均化せずに、全員を一度に色分けすることで、モジュール解析を行う手法を開発。この手法により、結果のばらつきが少なくなり、安定的に、統合失調症患者群と健常者群それぞれに特徴的な脳部位モジュールを推定することが可能になったという。

これは、患者の主観的意見に左右されない、脳画像のデータに基づく客観的な診断法につながる、精神医学領域において注目される成果だとしている。今回開発した手法により、今後、医療の現場で実際に使えるような、医者の診断を補完する自動診断システムの開発に発展することが期待される。

▼関連リンク
情報通信研究機構 プレスリリース

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