日立製作所と共同で空間分解能を向上させたPET装置を開発
北海道大学は7月27日、同大大学院医学研究科の平田健司特任助教らの研究グループが、高い空間分解能をもつ半導体検出器PET装置と診断薬剤であるF-18 FDGを用いて、赤核の代謝活動を画像化することに成功したと発表した。
画像はリリースより
脳の深部には神経核と呼ばれる小さな構造体が複数存在し、それぞれの神経核が重要な機能を担っている。今回、研究グループは赤核に注目。動物実験では赤核の種々の機能が明らかにされていたが、生きたヒトでの赤核の機能は評価することが難しく、十分に解明されているとは言えなかった。脳の疾患に関わっている可能性を示唆する報告もあり、その機能を解明することは医学の発達に寄与すると考えられる。
神経機能を調べる上で、代謝を測定するポジトロン断層法(PET)は非常に有用なツールだが、赤核は1cmと小さく、従来のPETの空間分解能では可視化は不可能だった。そこで、北海道大学は株式会社日立製作所と共同で、半導体検出器を用いて空間分解能を向上させたPET装置を開発し、臨床応用してきた。その成果の1つとして、今回、赤核のブドウ糖代謝を測定したという。
運動機能のみならず高次機能への関与を示唆
今回は、半導体検出器によるPET装置と、フッ素18標識のフルオロデオキシグルコース(FDG)を用いて、20人の脳のPET画像を撮影。赤核の代謝を測定した上で、3D-SSPという技術を用いて統計解析し、赤核の代謝とよく相関する大脳皮質・小脳の部位を調べた。
その結果、20例全例で、赤核の代謝活動の画像化および測定に成功。また、統計解析によって、赤核が大脳・小脳のいろいろな部位と代謝相関があり、影響しあっていることが示唆された。古典的には、赤核は運動機能を司る神経核として知られているが、今回の結果では大脳皮質の運動野だけではなく「考える」「理解する」といった高次機能を司る連合野の多くの部位とも相関が認められ、赤核は運動機能のみならず高次機能にも関与している可能性が示唆されたという。
今後は、神経変性疾患や脳腫瘍などで、赤核やその他の神経核の代謝が病気とどのように関係しているかを明らかにし、治療に結びつけたいとしている。また、そのためにも、高性能半導体 PET装置は有用なツールであると研究グループは述べている。
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