表情を処理する脳の仕組みの神経ネットワーク構造を解明に
京都大学は7月24日、心のはたらきがどのような神経ネットワークの時空間ダイナミクスで実現されるかを、世界で初めて明らかにしたと発表した。
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この研究は、同大医学研究科の佐藤弥特定准教授、ATR脳活動イメージングセンタの河内山隆紀研究員、医学研究科の魚野翔太特定助教らのグループによるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」のウェブサイトに速報版として7月24日付で掲載されている。
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた脳画像研究によって、表情を処理する神経メカニズムの解明はこれまでも行われてきていた。しかし、fMRIは脳血流という秒単位の間接的な神経活動の指標を計測するため、ミリ秒単位で起こる実際の神経活動の時間変化は不明だったという。さらに、表情を処理するために複数の脳部位が情報をやりとりする神経ネットワークの構造も未解明なままだった。
ミリ秒・ミリメートルという高い時空間分解能で神経活動を同定
研究グループは、脳の電磁気信号を計測することで神経活動をミリ秒単位で明らかにできる計測装置「MEG」にて、健常者を対象として、動的表情を見ている間の神経活動を計測。このMEG信号の時間情報を、fMRI信号の空間情報と統合する最新の電流源再構成法で解析することで、神経活動をミリ秒・ミリメートルという高い時空間分解能で同定することに成功したという。
また、最新の神経ネットワーク解析法である動的因果モデリング法で、ミリ秒単位で変化する神経ネットワークの構造を検討。その結果、動的表情を見たときに動的モザイクの場合よりも強く、視覚野の複数の領域(形態や動きの視覚分析に関わる)が150~200ミリ秒というすばやい段階で一斉に活動する様子が捉えられた。動的表情は、300~35ミリ秒の段階で、他者の運動を自分の運動に結び付ける「ミラーニューロン」があるといわれている部位である下前頭回の活動も引き起こしていたという。
さらに神経ネットワーク解析から、まず視覚野の活動が下前頭回の活動を引き起こすという順方向のネットワークが形成され、200ミリ秒以後に下前頭回の活動が視覚野の活動を調整するという逆方向のネットワークが形成されることが解明された。
これらの結果は、動的表情を見たときに、顔の形態や動きなど多様な視覚情報を分析し、表情に共鳴して自分の運動を起こし、自分の運動情報を使って視覚処理を調整するという心のはたらきが、どのような神経ネットワークの時空間ダイナミクスで実現されるかを世界で初めて明らかにしたものである。
同研究グループは、今回の研究成果が、精神疾患における表情コミュニケーションの問題の神経基盤を解明するものであると期待を寄せている。
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・京都大学 研究結果