医薬品に関する情報量が増加する中、いかに製薬企業から適切な情報を医師、薬剤師等の医療関係者や患者に提供できるかが、24日に都内で開かれた日本製薬医学会年次大会で議論された。製薬企業側からは、科学的な立場で情報発信する取り組みが示された一方、医療機関側からは、「医師に還元できている情報は少ない」との意見が出るなど、ギャップが見られる状況が浮かび上がった。
バイエル薬品の奥村正文氏は、同社のくすり相談で副作用を防ぐための適正情報を普及させることを目的に、薬局薬剤師に企業から電話をかけるアウトバウンドコールを実施した取り組みを紹介した。
薬剤師から服用者を示す「患者携帯カード」を手渡してもらうのが目的で、実際に月経困難症治療剤の事例では、約9割の薬局でアウトバウンドコールを受諾し、9割以上の薬局で患者携帯カードが利用されている成果を示した。副作用マネジメントが重要となる抗癌剤の事例でも、薬局から良好な評価が得られたことを紹介した。
MSDの梅田達也氏は、これまで一般的な医薬情報部の役割は情報「収集」にあったとし、今後は医薬品情報の戦略的な「発信」基地になる必要性を指摘。最新の科学的情報や知識に基づく学術情報の社内提供、科学的観点からのコンサルティング、戦略提案を行っている同社の医薬情報部の取り組みを紹介した。
こうした企業側の取り組みに対し、小児科医の立場から東京医科歯科大学の森雅亮氏は、「医師に還元できている情報は少ないのではないか」と指摘。福井大学病院薬剤部の中村敏明氏は、「MRに質問してもその場で回答がなく、後で回答があってもズレた内容が多い。直接メディカルアフェアーズ部門に電話することは頻繁にある」と現場の実感を披露した。