3時間後の熱中症リスクを10分で評価
東北大学のサイバーサイエンスセンター、名古屋工業大学、日本気象協会の共同研究グループは7月21日、個人特性を考慮し熱中症対策を提案する、新たな技術の開発を発表した。
画像はリリースより
研究グループは、乳幼児や高齢者などの個人特性を考慮した熱中症リスク評価のための複合物理・システムバイオロジー統合シミュレーション技術を、スーパーコンピューターに効率的に実装、高速化することに成功。そしてこのデータにより、気象予報データと融合させることによる、個人特性を考慮した3時間後の熱中症のリスクを10分で評価する技術を新たに開発したという。
名古屋工業大はこれまでに、体内組織を考慮した温熱人体モデルを構築し、熱中症のリスク要因である体内深部温度上昇および発汗量を解析してきた。東北大学サイバーサイエンスセンターは、高メモリバンド幅と高いコア性能を有するベクトル並列型スーパーコンピューターを整備・運用。日本気象協会では、広く一般人に向けた熱中症予防に関する啓発活動を行ってきた。
個人属性に適した熱中症リスク評価で、発症数の低減目指す
今回の共同研究では、名古屋工業大が開発してきたマルチフィジックスとシステムバイオロジー融合した解析コードを、東北大が中心となりベクトル化、並列化を同時に施し、スーパーコンピューター「SX-ACE」に効率的に実装。スーパーコンピュータにおいて64コアを同時に用いた結果、3時間後のリスク評価に要する解析時間は、成人男性で45秒(3歳児は15秒)となったという。
この解析手法に、日本気象協会が提供する気象予測データを入力情報として組み込むことにより、例えば、大規模イベントなどにおける熱中症リスク評価シミュレーションが準リアルタイムで実施できるようになるという。
これらの技術の開発により、今後予定されている大規模なスポーツ大会や屋外イベント等において、個人属性を考慮した適切な熱中症リスク評価技術を活用することで、今まで以上に場面に応じた発症数の低減に貢献することが期待できるとしている。
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・東北大学 プレスリリース