その中で、「付加価値の高いサービスである在宅に踏み込んでほしい」と積極的な活動を促す一方、「薬剤師が数人の小規模薬局が単独で在宅業務を行うのは難しいのではないか」との見方を示し、一定の規模を確保するため、複数薬局がチームで共同サービスを行っていく必要性を指摘した。
鈴木氏は、団塊世代が75歳以上となる2025年にピークを迎える日本の高齢化について、「労働人口が激減し、高齢者の数は増えない」と分析。一人暮らしの高齢者が増え、診療所における在宅患者数の割合が大幅に増加するとの見方を示し、「今後、人口は3大都市圏に集中する。薬局も含め、産業には一定程度の規模が必要となる」とした。
実際、大手調剤チェーンの薬局数が増加する一方、企業数は減少傾向をたどっている状況を指摘。集約化により、これまで伸び続けてきた調剤薬局市場も縮小しているとし、「国の保護を受けた時代から競争時代に入っており、コストの高い中小薬局は苦戦する可能性が高い。他業種からの参入も相次ぐ中、どう機能を維持していくかが課題」との認識を示した。
その上で、かかりつけ薬局を志向した面分業が進んでいない現状を挙げ、処方頻度が低く、副作用の発生リスクが高い抗癌剤などは院内処方とし、高血圧や糖尿病など患者数の多い生活習慣病治療薬は、院外の薬局で調剤する「新しい医薬協働の関係が必要」と提言した。
在宅医療への関与については、「訪問薬剤管理指導を行っている薬局は、常勤薬剤師5人以上の施設が圧倒的に多い」とし、「調剤と在宅で利益を出そうとすれば、在宅訪問には数人の薬剤師で対応しなければ難しい」との見方を示し、在宅業務を複数薬局がチームで行っていく必要性を指摘した。
これらを踏まえ、鈴木氏は「薬価引き下げや後発品の増加等を考えると、薬価差に依存せず、対人サービスの技術料を経営の柱に位置づけてもらいたい」と単なる物品販売業からの業態転換を求め、「付加価値の高い在宅サービスに踏み込んでほしい。厚労省としても、そういう薬局を支援していきたい」と積極的な行動を促した。
さらに「在宅医療の最大の課題は情報交換コスト」と指摘。今後、ITをどう生かしていくかが大きな課題と位置づけた。