グリア細胞「アストロサイト」が長期にわたり活性化
九州大学は7月21日、痒い皮膚と神経で繋がっている脊髄後角でアストロサイトと呼ばれるグリア細胞が長期にわたって活性化していること、この活性化を抑えることで慢性的な痒みを鎮めることができることを発見したと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大大学院薬学研究院ライフイノベーション分野の津田誠教授、白鳥美穂学術研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Nature Medicine」オンライン版に7月20日付けで公開されている。
アトピー性皮膚炎などに代表される耐え難い慢性的な痒みには、市販の抗ヒスタミン薬などは効果が認められないこともあり、著効する治療薬がなかった。このような慢性的な痒みのメカニズムを明らかにし、画期的な治療薬を開発することが世界中で求められている。
STAT3の阻害でアストロサイトの活性化と引掻き行動を抑制
研究グループは、皮膚を激しく引掻くアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて研究を行い、痒い皮膚と神経で繋がっている脊髄後角でアストロサイトが長期にわたって活性化していることを発見した。
さらに、遺伝子の発現を促すタンパク質 「STAT3」がこのアストロサイト内で働いており、それを阻害することでアトピーマウスのアストロサイトの活性化と引掻き行動が共に抑えられることを明らかにしたという。また、アトピーマウスの脊髄の遺伝子を調べたところ、STAT3の働きに伴って活性化アストロサイトが「リポカリン2」(LCN2)というタンパク質を作り、それが脊髄後角ニューロンでの痒み伝達物質の作用を強めることも判明したという。
現在、九州大学大学院薬学研究院では、既承認医薬品から新しい作用を見つけ、より早く臨床で使用できるようにするための研究「エコファーマ」を、2015年2月に竣工したシステム創薬リサーチセンター「グリーンファルマ研究所」で推進している。今後は、今回の研究により明らかとなった、慢性的な痒みに重要である活性化アストロサイトの高まった活動を抑える薬や、LCN2の産生を抑える薬等を既承認医薬品から探索する計画を検討していくとしている。
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