J-Brain Cargoの治療薬創製への適用可能性を検討
エーザイ株式会社は7月21日、JCRファーマ株式会社が保有する血液脳関門(Blood-Brain Barrier:BBB)通過に関する技術「J-Brain Cargo」の治療薬創製への適用可能性を検討することを目的として、JCRファーマとフィージビリティー試験契約を締結したことを発表した。
血液脳関門とは、さまざまな有害物質が脳組織を障害するのを防ぐため、血液から脳内への物質の移行を制限する機能であり、脳の恒常性維持に不可欠となっている。それゆえ、神経活動のエネルギー源となるアミノ酸やブドウ糖などの必要な物質は脳内に選択的に輸送されるが、それ以外の多くの物質は、このバリア機能により脳内に自由に入ることができない。
このバリア機能は、脳毛細血管の内側を覆っている血管内皮細胞が、ぴったりと接着し合って密着帯(タイトジャンクション)を形成しているためであり、水溶性の高い物質あるいはタンパク質などの大きな分子はこの関門を透過しにくい。一方、栄養素などの必要な物質は、脳毛細血管内皮細胞にある、さまざまなレセプターやトランスポーターと呼ばれる輸送機構により、選択的に血液脳関門を透過し、脳組織内へ運ばれる。また、何らかの要因で脳毛細血管内皮細胞内に入ってしまった必要とされない物質は、排泄を司るトランスポーターがそれらを血中へ戻すことにより脳内への侵入が防がれていることも知られている。
中枢神経疾患領域を中心に革新的な治療薬の創製めざす
今回、検討対象となっている「J-Brain Cargo」は、脳毛細血管の内皮細胞表面に発現している、あるレセプターを介して目的とする物質の血液脳関門通過を実現する技術。JCRファーマが実施した実験では、通常の20~100倍の効率で血液脳関門を通過させることができたという。
この技術は、対象となる高分子から低分子までの薬剤に血液脳関門通過能を付与できる技術で、静脈内投与で十分量の薬剤が脳内に到達して薬効を発揮するため、これまで改善が期待できなかった脳神経症状を伴う病態に対し、大きな改善効果が期待される。
今回の契約で両社は、J-Brain Cargoとエーザイが選択する特定の医薬品候補物質を用いて研究協力を行い、中枢神経疾患領域を中心に、革新的な治療薬の創製をめざすとしている。
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・エーザイ株式会社 ニュースリリース