心臓負荷を軽減すると考えられる新規作用機序を有するARNI
スイス・ノバルティス ファーマは7月7日、米国食品医薬品局(FDA)から左室駆出率が低下した心不全の治療薬として「LCZ696」の承認を取得したと発表した。
同剤は、心不全における心臓負荷を軽減すると考えられる新規作用機序を有するアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)。1日2回投与する錠剤で、心臓に対する防御的な神経ホルモン機構(NPシステム、ナトリウム利尿ペプチドシステム)を促進すると同時に、有害な機構(RAAS、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)を抑制する作用があり、ACE阻害薬「エナラプリル」との直接比較試験で、死亡率の有意な低下を示した、最初にして、現時点では唯一の治療薬だ。
今回の承認により、ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類クラスII~IVの患者に対し、心血管死のリスク低下、および心不全による入院のリスク低下を適応として処方が可能となる。通常は、ACE阻害薬またはその他のアンジオテンシン受容体拮抗薬に代えて、他の心不全治療薬と併用投与する。
日本国内でも慢性心不全患者を対象に第3相臨床試験を実施中
今回の承認は、8,442名の患者が参加した「PARADIGM-HF試験」の結果に基づくもの。同試験は、LCZ696がACE阻害薬「エナラプリル」と比較して心血管死のリスクを有意に減少させることを示した時点で早期に終了。試験終了時点で、LCZ696を投与した左室駆出率が低下した心不全患者は、エナラプリルを投与した患者よりも生存率が高く、心不全による入院率が低いことが分かった。また、安全性データの解析から、LCZ696の忍容性プロファイルはエナラプリルと同様に良好だったという。
同剤は現在、カナダ、スイス、EUなど、世界各国の保健当局によって審査中。世界各国で承認されれば、左室駆出率の低下した心不全を適応として、売上高のピークは50億ドルを超えると、同社は予想している。なお、現在日本では左室駆出率が低下した日本人の慢性心不全患者を対象とした第3相臨床試験を実施している。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース