厚生労働省と総務省は17日、「クラウド時代の医療ICTのあり方に関する懇談会」を開き、個人の健康情報を一元的に管理する「パーソナルヘルスレコード(PHR)」を活用したヘルスケアサービスの事例や医療現場におけるICT技術の導入例について検討した。
この日、参考人として出席した神戸市の三木孝保健福祉局長は、先月から神戸市薬剤師会と連携し、市内でソニーの電子お薬手帳「harmo(ハルモ)」導入に向けた試験的サービスを開始したことを報告。個人情報を含まない形で、調剤情報や副作用等の薬歴データをクラウドにため込み、集めた統計データを自治体や製薬企業が利用することにより、患者や薬局にインフルエンザの発生状況や薬剤を使用する上での注意点をフィードバックする取り組みを説明した。
三木氏は、行政がPHRデータを活用することで、医療費適正化や公衆衛生の向上、災害対応等のメリットが期待できると指摘。電子お薬手帳のサービスを踏まえ、今後は介護予防手帳でも電子化を図り、高齢者の生活行動の情報と紐づけて、介護予防策を展開していく考えを示した。
一方、運用面の課題として、健診機関や行政等、個人の健康に関わるデータが官民で分散しており、全てのデータを管理する主体や収集すべき個人情報の範囲が定まっていない点を指摘した。
その上で、診療情報とその他の健康情報では、求められるセキュリティーのレベルが異なるため、医療機関との連携時に問題となる可能性があるとした。
その後の意見交換では、委員から「米国では民間の医療保険が中心のため、PHRを導入し、医療費の効率化を図ることに利用者も積極的だが、日本では、どのように健康リテラシーを高め、国民にPHR参加へのインセンティブを持たせるかを検討する必要がある」と課題を指摘する声も出た。