カルボニルタンパクと皮膚の乾燥状態との関連を検証
東京工科大学は7月14日、角層細胞に存在するカルボニルタンパクが紫外線から活性酸素を生成することでさらに増加し、皮膚の乾燥を誘導するメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大応用生物学部の正木仁教授らのチームによるもの。研究成果は、6月に開催された「第40回日本香粧品学会学術大会」にて発表されている。
画像はリリースより
太陽光線への慢性的な曝露は、皮膚内の酸化ストレスを亢進し、老人性色素斑やシワの顕在化といった光老化皮膚の形成を促進することは知られている。近年、露光部位の皮膚に、酸化タンパクであるカルボニルタンパクが多く存在することが明らかになっていた。
また、疫学的な調査によって、角層のカルボニルタンパクと皮膚表面の水分量および経表皮水分蒸散量(TEWL)に相関があることや、冬季の乾燥性皮膚においてカルボニルタンパクの増加が報告されている。同研究チームでも、再構築皮膚モデルを乾燥条件下で培養することによりカルボニルタンパクが増加することを確認していたという。
このようにカルボニルタンパクと皮膚の乾燥状態との関連が示唆される一方、その誘導メカニズムについての明確な知見はなかった。そこで同研究グループは、角層に存在するカルボニルタンパクが皮膚の保湿機能を低下させるという仮説のもと、検証に取り組んだ。
角層細胞タンパクのカルボニル化と活性酸素生成のループが関与
研究グループは、紫外線照射した剥離角層からの活性酸素生成を、活性酸素反応性の化学発光プローブを用いた手法で確認。この発光は、スーパーオキシド・ディスムターゼの添加により消失したことから、活性酸素の一種のスーパーオキシドアニオンラジカルである可能性が示唆されたという。さらに、紫外線照射によりカルボニルタンパクも増加したことから、スーパーオキシドアニオンラジカルが角層細胞内タンパクのカルボニル化を促進することも併せて示された。
実験では、ケラチンフィルムおよび牛血清アルブミンをアクロレイン処理してカルボニルタンパクを調製し、紫外線照射による活性酸素の生成を、化学発光法とESRピンストラップ法で確認した。その結果、カルボニル化処理条件に依存した化学発光プローブの化学発光強度の増強と、スーパーオキシドアニオンラジカルに由来するESRスペクトルが確認されたという。
これらの結果から、角層中のカルボニルタンパクが光増感反応によりスーパーオキシドアニオンラジカルを生成し、さらに角層細胞内タンパクのカルボニル化を行う“ループ”の存在が確認されたとしている。また、摘出したブタ皮膚を用いた実験では、角層のカルボニル化度に依存した皮膚表面水分量の低下と経表皮水分蒸散量の増加を示し、乾燥性皮膚の状態も再現されている。
今回の研究によって得られた結果は、太陽光線曝露時の皮膚の乾燥メカニズムの一因を明らかにし、抗酸化によるスキンケアの重要性を改めて裏付けるものと言える。研究グループは今後、スキンケア化粧品や日焼け止め化粧品の開発などへの応用が期待されると述べている。
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・東京工科大学 プレスリリース