エピジェネティクス作用薬剤に応答する全ゲノムの遺伝子発現変動情報
理化学研究所は7月15日、統合生命医科学研究センター医科学数理研究グループの角田達彦グループディレクター、宮冬樹リサーチアソシエイトおよび東京医療センターの松永達雄室長、務台英樹研究員らによる共同研究グループが、難聴マウスのエピジェネティクス作用薬剤に応答する全ゲノムの遺伝子発現変動情報を収集し、そのデータを全世界に公開したことを発表した。
画像はリリースより
難聴は有病率の高い疾患の1つで、65歳以上の難聴の有病率は30%を超えると言われており、日本では約1000万人が難聴と推計されている。進行性・加齢性の難聴の原因には、生活習慣などの環境因子と遺伝的要因が複合的に関わっていると考えられており、これまでに発症に関連する因子の一部は明らかになっているものの、不明な点も多く、難聴進行のメカニズムの解明、難聴予防・治療法の開発が急務となっていた。
世界中の研究者が無償で活用可能に
研究グループはこれまでに、早期に難聴が進行するモデル動物であるDBA/2Jという系統のマウスに対して、エピジェネティクス作用薬剤であるLメチオニンとバルプロ酸の2種を同時に8週間投与することで、難聴の進行が統計的に有意に抑制されることを発見していた。
今回、エピジェネティクス作用薬剤を投与され、難聴進行が抑制されたマウス群と非投与のマウス群の全ゲノム中の遺伝子の発現状態を網羅的に調査。米国国立衛生研究所(NIH)の国立生物工学情報センター(NCBI)の公共データベースであるGene Expression Omnibus(GEO)に、この薬剤投与・非投与のマウスの全ゲノム遺伝子発現データを提供、世界中の難聴を専門とする研究者が誰でも自由に無償で活用できる形で公開したという。
同研究により、エピジェネティクス作用薬剤による難聴の進行抑制時に発現変動する遺伝子が網羅的に明らかとなり、難聴進行抑制メカニズムや難聴そのもののメカニズムの解明、難聴の薬剤による予防や治療ターゲットの探索にも繋がっていくことが期待できるとしている。
なお、この研究結果は、欧州のオンライン科学雑誌「Genomics Data」に7月2日付けで掲載されている。
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・理化学研究所 プレスリリース