東京大学と共同研究。より実臨床に即したデザインに
ブラザー工業株式会社は7月13日、同社国内販売子会社のブラザー販売株式会社が、ヘッドマウントディスプレー「AiRScouter」(エアスカウター)の新製品として、業務モデル「WD-200A」を7月下旬に、医療モデル「WD-250A」を10月下旬にそれぞれ発売すると発表した。
ブラザー社のヘッドマウントディスプレー
「エアスカウター」
同製品は、東京大学との共同研究のもと、画像の見やすさや自然な装着感など、さまざまな改良が施されている。同日行われた発表記者会には、共同研究メンバーの1人でもある、東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター腎疾患総合医療学講座の花房規男特任准教授が出席。開発の経緯や今後の展望を語った。
透析が専門の花房氏は「近年、患者さんへの針刺しが難しくなってきている、一人のスタッフが大勢の患者さんに針を刺さなくてはならないなど、(受け入れ側の)問題点もあります」と現状を語る。
こうした中、安全・確実に穿刺が行うことができ、患者へのメリットだけでなく、透析室の円滑な運営にも重要な役割を担うと考えられているのが、エコーガイドを用いた針刺しだ。しかし、このやり方にも問題はあった、と花房氏。「エコーガイドのモニターを見ると、針を刺す場所と視線が異なってしまいます。これは、初心者だけでなく中級者・上級者にとっても問題となります」。花房氏は、このことがエコーガイドの普及が遅れるひとつの要因となっているのではないかと考察。ヘッドマウントディスプレーによって解消できないかと考えたという。
汎用性の高いHDMIとビデオ端子による入力が可能に、ピント調節機能も改善
東京大学医学部附属病院
22世紀医療センター腎疾患総合医療学講座
花房規男特任准教授
一世代前のメガネ型のヘッドマウントディスプレー(WD-100G/100A)は、こうした問題の解消に一定の成果を見せた。しかし、臨床現場で使用するには、「装置の小型化」と「穿刺の違和感」の面で改善すべき点があったと花房氏。「旧タイプはDVI入力で、バッテリーを別途積まなければならず、複雑な構成が必要でした。また、私もメガネをかけていますが、旧タイプではメガネを外す必要がありました」
その改良型となる「WD-200A」「WD-250A」は、コントロールボックスを大幅に小型化。「WD-250A」では入力方式を汎用性の高いHDMIとビデオ端子としたことで、多くの医療機器に簡単に接続できるようになった。さらに、メガネ型からヘッドバンド型にすることで、装着時の問題もクリアした。
施術中の良好な視野・視線移動を可能とするためには、ピント調節機能も重要と花房氏は語る。「穿刺点とエコーの画面が前後にずれてしまうと、ピントを前と後ろにずらさなければなりません。旧タイプにもピント調整機能はついていましたが、新型では本体と全面にダイヤルを置き、ピント合わせが容易になりました」
同製品を含めたウェアラブルディスプレイの将来について、花房氏は医療領域での利用拡大に期待を寄せる。「両手で作業しながら画面情報を見なくてはならない場面は、医療現場にたくさんあります。他の領域においてもヘッドマウントディスプレーが有用なのではないでしょうか」(花房氏)
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