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蛍光イメージング試薬によって乳がんの取り残しを可視化する技術の確立-東大と九大

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2015年07月16日 PM04:00

蛍光試薬をスプレーすると数分で乳腺腫瘍の識別が可能に

東京大学は7月14日、同大学院薬学研究科・医学系研究科の浦野泰照教授らの研究グループが、がん細胞で活性が上昇している特定のタンパク質分解酵素によって蛍光性へと変化する試薬を開発。九州大学病院別府病院の三森功士教授らと共同で行った研究で、乳腺手術において摘出した検体に対して同試薬をスプレーすることで、数分で乳腺腫瘍を選択的に光らせ、周囲の乳腺と脂肪組織中の乳腺腫瘍を識別できることを明らかにしたと発表した。


画像はリリースより

乳がんに対する手術の約半数を占める乳房部分切除術では、がん細胞を取り切れたかどうかを確認するために、切除標本の断端にがん細胞が含まれているかを手術中に診断する検査が必須となっている。しかし、病理医が不足している現在、切除標本の全ての断端を顕微鏡検査で調べることは労力を要し、実行できない施設もあるのが現状だ。また切除面全体の病理検査をすることは不可能であり、ごく一部の代表的な部分のみの検査しか出来ないため、がんを見逃してしまう可能性が指摘されていた。

研究グループは2011年に、がん細胞で活性の高い特定のタンパク質分解酵素活性を利用した、世界初の迅速がん部位可視化スプレー蛍光試薬の開発に成功。この蛍光試薬は迅速かつ簡便にがん細胞を光らせることができるため、実際の手術中にヒト臨床サンプルへと適用することで、微小がんの検出が可能となり、がんの見逃しを劇的に低減させるのではないかと期待されていた。

乳管の中にある1mm以下のがん組織も検出可能に

今回、2011年に開発したγ-グルタミルトランスペプチダーゼというタンパク 質分解酵素活性を鋭敏に検出可能な蛍光プローブを、乳がん手術で摘出された実際の手術検体に散布し、その有用性を検証。その結果、非浸潤性乳管がんを初めとする様々な乳腺腫瘍を光らせ、これまで肉眼ではわからなかった腫瘍を明瞭に描出することが可能となったという。

また、同手法により乳管の中にある1mm以下のがん組織も検出可能であることがわかった。測定方法は簡便かつ迅速で、蛍光プローブの散布から5分程度で、1mm以下の微小がん部位であっても、選択的かつ強い蛍光強度で光ることが確認されたという。今回開発されたスプレー蛍光試薬は、乳腺の手術で摘出した検体の中に隠れている微小ながんの容易な発見を可能とし、病理診断での見落としを無くし、手術での取り残しを防ぐ役割が期待できる。

同研究グループは、蛍光の検出が安価かつ簡便に行えることから、この技術が一般的ながん検出手法として普及する上で大きな有用性があると期待。現在、(UTEC)からの投資を受けた五稜化薬株式会社と共同し、臨床試験への適用に向けた準備を進めている。

▼関連リンク
九州大学 プレスリリース

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