新たな作用機序を持つ多発性骨髄腫の治療薬
スイスのノバルティス社は6月26日、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会(CHMP)が「ファリーダック(R)」(一般名:パノビノスタット乳酸塩)に対し、過去にボルテゾミブおよび免疫調節剤(IMiD)を含む2種類以上の治療を受けた経験のある再発、または難治性多発性骨髄腫の成人患者へのボルテゾミブとデキサメタゾンの併用下で使用することに肯定的意見を採択したと発表した。EUで承認されれば、同剤はこれらの患者が使用可能となる、同クラス初の抗がん剤となる。
欧州における多発性骨髄腫の患者数は、約84,000人といわれている。同剤は、多発性骨髄腫における有効性が証明された初のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤で、多発性骨髄腫患者の細胞機能の修復に寄与するものと考えられている。
日本国内では再発または難治性の多発性骨髄腫の治療薬として承認済
CHMPの承認勧告は、PANORAMA-1と呼ばれる無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同の国際協同第3相臨床試験で実施されたデータに基づくもの。同試験ではボルテゾミブおよびIMiDを含む2種類以上の治療を受けた経験を持つ再発、または難治性の多発性骨髄腫患者147名のサブグループ解析を解析。その結果、ボルテゾミブとIMiDの両方による治療歴のあるパノビノスタット群の患者では、無増悪生存期間(PFS)の中央値におけるベネフィットがプラセボ群に比べて大きくなることが判明しており、有効性および安全性が得られているという。
欧州委員会は通常、CHMPの承認勧告に従い、勧告から3か月以内に最終決定を下す。この決定はEUに加盟する全28か国とアイスランド、ノルウェイおよびリヒテンシュタインに適用される。欧州以外での同剤に関する承認申請は現在、世界中の規制当局による審査が行われているという。
ボルテゾミブおよびデキサメタゾンと併用する同剤は、過去にボルテゾミブおよびIMiDを含む2剤以上の治療経験を持つ多発性骨髄腫患者に対する治療薬として、米国では2015年2月、チリでは同年5月にそれぞれ承認されており、日本国内でも7月3日に再発または難治性の多発性骨髄腫の治療薬として承認されている。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース