エピジェネティクスに影響を与える初のHDAC阻害剤
スイスのノバルティスは6月12日、「ファリーダック(R)」(一般名:パノビノスタット乳酸塩)について、第3相臨床試験の新しいサブグループ解析の結果を公表した。
報告によると、過去にボルテゾミブおよび免疫調節剤(IMiD)など2種類以上の治療薬を使用したことのある再発又は難治性多発性骨髄腫の患者において、ファリーダックをボルテゾミブおよびデキサメタゾンと併用した場合、無増悪生存期間(PFS)の中央値が7.8か月延長したという。この解析結果は、ウィーンで開催された第20回欧州血液学会議(EHA)でも発表されている。
ファリーダックは多発性骨髄腫に使用可能な、初のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤。HDAC阻害剤として、そのエピジェネティクス活性は多発性骨髄腫患者の細胞機能の修復に役立つと考えられている。
2015年2月には、過去にボルテゾミブおよびIMiDを含む2種類以上の治療経験を持つ多発性骨髄腫患者に対し、ボルテゾミブとデキサメタゾンとの併用下で使用することが、米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。日本では、7月3日に再発又は難治性の多発性骨髄腫の治療薬として承認されている。
2種類以上の前治療歴をもつ患者で、PFS中央値を7.8か月間延長
今回発表されたデータは、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同の国際共同第III相臨床試験「PANORAMA-1」で実施された、ボルテゾミブおよびIMiDを含む2種類以上の治療を受けた経験を持つ、再発又は難治性多発性骨髄腫患者147名のサブグループ解析から得られたもの。過去に受けた治療が1剤のみの患者はこのサブグループ解析から除外したという。
解析の結果、このサブグループでは、PFSの中央値が、パノビノスタット治療群では12.5か月まで延長されたのに対し、プラセボとボルテゾミブおよびデキサメタゾンの併用群では4.7か月の延長だった(ハザード比0.47、[95%信頼区間 CI、0.31~0.72])。パノビノスタットとボルテゾミブおよびデキサメタゾンの併用療法とプラセボ群の完全寛解/完全寛解に近い状態に達した割合ならびに全奏効率は、それぞれ21.9%対8.1%、58.9%対39.2%と、パノビノスタット治療群で高くなったという。
これらのデータにより、治療が難しくアンメットニーズの高い患者にとって有望な新規作用機序を持つ薬剤であるファリーダックの臨床における使用について、医療従事者の理解を深めることができると、同社は述べている。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース