再生医療新法に基づく「体性幹細胞による膝半月板再生の臨床研究」を開始へ
東京医科歯科大学は7月1日、同大再生医療研究センターの関矢教授らの研究グループが、医学部附属病院を提供機関として、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、第2種再生医療等提供計画を厚生労働省関東信越厚生局に提出し、6月25日に受理されたことを発表した。
画像はリリースより
再生医療の迅速かつ安全な提供を促進するため、2014年11月25日から「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行された。同大では、第1種再生医療等(例:iPS 細胞を用いた医療)、第2種再生医療等(例:体性幹細胞を用いた医療)の審査を行うことができる特定認定再生医療等委員会を2015年3月に設置。同年4月に審議を開始するなど、再生医療の提供手続きを着実に進めていた。
特定認定再生医療等委員会の設置は、大阪大学に次いで日本で2番目に早く、第2種再生医療等提供計画の提出・受理は国内では初めてだという。今回の届出受理を受け、同大医学部附属病院では、臨床研究「逸脱を伴う膝半月板損傷の滑膜幹細胞による治癒促進」を実施することが可能となる。
変形性膝関節症の再生医療への発展に期待
半月板は、膝関節の大腿骨と脛骨の間にある三日月形の線維軟骨で、関節内で衝撃を和らげるクッションの役目を果たしている。血行は辺縁部の30%に限られ、荷重によるストレスにさらされるため、損傷すると治りにくい。損傷すると、膝の不安定な感じ、曲げ伸ばしの制限、痛みなどの原因になる。
若年者では半月板部分切除後に、中高齢者では加齢により、半月板が関節の中心から離れるようにずれてしまう「逸脱」が起こる。半月板が逸脱すると、クッションが覆う面積が低下するため、周囲の関節軟骨に負担がかかり軟骨がすり減り、変形性膝関節症を発症する。
同院では、運動器外科の宗田大教授が中心となり、逸脱した半月板をもとの位置に整復し、糸で脛骨に結んで固定する「セントラリゼーション」という手技を加えた半月板の修復術を2011年から実施。今回の研究では、逸脱を伴う膝半月板損傷の患者に、半月板を本来の位置に整復・制動するセントラリゼーションを行い、修復した半月板の周囲や関節軟骨欠損部に患者自身の滑膜から培養した滑膜幹細胞を移植する。セントラリゼーションの成績の向上と、半月板・軟骨の再生を期待する再生医療の安全性を評価するという。
なお、この研究は日本医療研究開発機構の支援のもとで、7月下旬に開始される予定だ。
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