血漿中の代謝物の濃度分布やタンパク質の頻度分布を明らかに
東北大学の東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は7月2日、東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査に参加した日本人500人分の血漿オミックス解析を完了したことを発表した。この研究は、500人以上の血漿の、網羅的メタボロームおよびプロテオーム統合解析を行った世界初の成果になる。
画像はリリースより
同解析は、質量分析(MS)法と核磁気共鳴(NMR)法を複合的に駆使することにより、日本人集団の血漿中の代謝物の濃度分布やタンパク質の頻度分布を明らかにすることに成功。このデータを、日本人多層オミックス参照パネルとして公開した。
血液中の代謝物やタンパク質の種類や濃度は、遺伝子や生活習慣の影響を受けて各個人で異なっており、同一人でも加齢や疾患の有無で変化すると言われている。近年、生活習慣や人種による代謝物などの違いと疾患との関連が、「疾患バイオマーカー」として注目されており、さまざまな生体分子を網羅的・包括的に解析する方法としてオミックス解析が導入され始めている。
しかし、血漿中の代謝物を調べるメタボローム解析とタンパク質を調べるプロテオーム解析の両方を同じ対象者で大規模に行った例はこれまでなかったという。また、遺伝要因との関連解析に必要なゲノム情報に関しても、遺伝子多型のみをスクリーニングするSNPアレイ解析がほとんどで、全ゲノム情報が解読された日本人集団を対象に大規模オミックス解析が行われた例はなかった。
日本人多層オミックス参照パネルとしてデータを公開
同機構は、宮城県と岩手県在住の日本人を対象とした大規模なコホート調査と、それにもとづくバイオバンク構築を進めるとともに、提供があった一部の試料から血漿オミックス解析を進めていた。そして今回、500人分の血漿メタボロームおよびプロテオーム解析の達成に成功したという。
集団における血液中の代謝物やタンパク質の種類とその分布を高精度に決定し、それらの組成や分布情報を、さまざまな疾患の原因を探索する際の比較対照(参照パネル)は非常に重要と考えられている。同機構は、今回の解析で得られたデータベース(日本人多層オミックス参照パネル)を公開。今後も解析例の数や同定物質の種類を増やしてパネルの精度を上げるとともに、ゲノム情報等との関連解析を行い、幅広い医科学研究の基盤として活用されるよう、データベースを随時更新していくとしている。
▼関連リンク
・東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 プレスリリース
・Japanese Multi Omics Reference Panel (jMorp)