クロストリジウム・ブチリカムMIYAIRI588株によるTレグ増加に着目
慶應義塾大学は7月1日、腸内の細菌叢を改善するプロバイオティクスであるクロストリジウム属細菌の菌体成分ペプチドグリカンが、免疫調節たんぱく質と免疫制御細胞を誘導し、腸炎を抑えるしくみを解明したと発表した。
画像はリリースより
これは、同大学医学部微生物学・免疫学教室の吉村昭彦教授が、同内科学教室(消化器)の金井隆典教授らと行った共同研究によるもの。研究成果は、米国科学雑誌「Immunity」オンライン版に6月30日付で公開されている。
人間の腸には、常に100兆個以上の腸内細菌が生息しており、その腸内細菌が免疫のバランスを制御し、健康を維持する要因であると考えられている。近年の研究では、腸内細菌叢の乱れや偏りが、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患と呼ばれる消化管粘膜に炎症を生じる病気の悪化に関与していることも判明している。
同研究グループは、クロストリジウム属に属する芽胞形成性のグラム陽性の桿菌「クロストリジウム・ブチリカムMIYAIRI588株」(以降、同クロストリジウム菌株)を餌に混ぜてマウスに投与すると、免疫の制御に重要な制御性T細胞(Tレグ)が増加し、腸炎が抑制されることに着目した。
炎症性腸疾患やアレルギーに対する治療法の開発に期待
制御性T細胞の増加の仕組みを詳細に解析したところ、同クロストリジウム菌株の細胞壁のペプチドグリカンが、免疫細胞の一種である樹状細胞を刺激し、その結果、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)と呼ばれる免疫を抑えるたんぱく質の分泌が促進されることを突き止めたという。
さらに、これまで明らかにされていなかったマウス腸管樹状細胞の染色体レベルでのTGF-βの産生メカニズム(エピゲノム制御)も解明し、より効率よくTレグを誘導する方法を明らかにしたという。
今回の成果を生かし、今後は潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患やアレルギーに対して、効果的で安全性が高い治療法の開発が期待される。
▼関連リンク
・慶應義塾大学 プレスリリース